私たちは日々、利用者や同僚の「良い行動」を見つけて声をかけたり、評価したりしながら支援や業務を進めています。しかし、どれほど丁寧に関わろうとしても、すべての望ましい行動を見逃さずに強化することは現実的には不可能です。行動分析学では、この“強化の限界”を前提にしながら、組織の行動をどう育てていくかを考えます。今回は、100パーセント強化できないという当たり前の事実を、マネジメントの視点から捉え直してみます。
【引用はじめ】
部下の日々の小さな課題解決の直後に褒めることを繰り返すと、課題達成の頻度が増す。しかし、課長がどんなに気をつけても、全ての部下に常に気を配り、小さな解決も見逃すことなく必ず強化することは現実的に難しいだろう。つまり、部下のすべての望ましい行動を100パーセント強化することは実際にはありえない。100パーセント強化できないということは、一部の望ましい行動は見逃される。つまり消去されるということだ。消去されれば、行動はしなくなる。かといって、課長は、100パーセント消去しているわけではないから、部下の課題達成がなくなることは考えられない。
(舞田竜宣・杉山尚子「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」日本経済新聞出版刊 2008.12.16, p.114)
【引用おわり】
望ましい行動をすべて強化することはできない――これは管理職だけでなく、支援者全員に共通する現実です。しかし、だからといって行動が消えてしまうわけではありません。大切なのは、「強化できる場面を確実に拾うこと」と「強化の質を高めること」。完璧を目指すのではなく、限られた場面を意図的に活かすことで、行動は十分に育ちます。私たちができるのは、100パーセントではなくても“意味のある強化”を積み重ねること。その積み重ねこそが、組織の成長と職員の力を支える土台になります。
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