2021年2月28日日曜日

課題分析とは

 大切な行動をするにしても、複雑な行動がいくつもつながっている。それらを明確にするために、個々の行動に分けることが重要になる。それが課題分析である。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第55回目である。

【引用はじめ】

 課題分析  複雑な行動や、いくつもの行動がつながって一連の行動になっているものを、個々の構成要素に分けること

 営業(どこが苦手なのか?) 名刺交換する 自社を紹介する ニーズを聴く 提案をする 条件を詰める 契約する 受注を得る (リピート)

 チェイニングでは、「営業する」などの抽象的に表現される行動が、実際にはいくつもの具体的行動からなっていることを学んだ。

 このように、複雑な行動や、いくつもの行動がつながって一連の行動になっているものを、個々の構成要素に分けることを課題分析という。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.77

【引用おわり】

 営業活動において、初対面の人と名刺交換し、そのあといろいろな過程を経て、受注に至る。そこに至るまでのプロセスを明確にすることで、営業マンは何をすべきか見通しを持った行動が大切となる。試行錯誤を最小限にすることが可能だ。複雑な一連の行動を個々の構成要素に分けて取り組むことで、効率的に大切な行動を成し遂げることができる。 

2021年2月27日土曜日

フォワード・チェイニングとバックワード・チェイニングの活用

 一連の行動の連鎖を前から順番に強化するのがフォワード・チェイニングであり、最後から逆順に強化するのがバックワード・チェイニングである。職場などの状況に応じて活用することだ。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第54回目である。

【引用はじめ】

 最後の行動から始めて逆順に強化してゆくことも、長いプロセスを順番にフォワード・チェイニングしてゆくのとはまた違った効果を生む。

 しかし実際の職場では、このようなことが必ずしも行われているとは限らない。

 営業で言えば、先輩や上司が上得意を自分で囲い込み、新人には全くの新規開拓を担当させていたりする。先輩や上司にとっては、自分も同じように苦労してきたのだから、後輩や部下もそうするべきだと考えているのかもしれない。

 だがそれでは、成長に時間がかかってしまう。また、できるようになる人と、途中で挫折してしまう人が出てしまう。

 育成の「歩留まり」とスピードを考えるなら、フォワード・チェイニングと一緒にバックワード・チェイニングもやるべきである。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.75~p.76

【引用おわり】

 新人にとっては、困難な課題が多い。そうした課題を乗り越える手立てがチェイニングである。挫折しがちなことが起きにくくするためにも、チェイニングという手法は役立つ。

2021年2月26日金曜日

勝ち味の経験

 新人の営業マンにとって、初めに受注をとれたような勝ち運に恵まれた人はできる営業マンになる。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第53回目である。

【引用はじめ】

 筆者は今まで何百人という営業担当者を見てきたが、できる営業マン(営業ウーマン)を調べてみると、その多くは、新人の頃に運よく受注が勝ちとれたという経験を持っている。

 もちろんご本人の努力や素質もあるだろうが、筆者に言わせれば、新人の頃に得たその幸運が、勝ち味を得させ、「勝ち癖」につながっているのではないかと思う。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.74

【引用おわり】

 新人にとって初期の経験の勝ち運は大きい。だから、バックワード・チェイニングによって、新人営業マンには受注をとれるようにするのがいい。

 もう契約ができている営業内容について、新人に担当させて簡単に受注まで持っていけるようにするのである。

2021年2月25日木曜日

バックワード・チェイニング

 新人には、営業で受注までこぎつけるのは夢のまた夢である。そうした「勝ち味」を経験するとしないでは大きな違いがある。そのような経験をさせる方法として、バックワード・チェイニングというやり方がある。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第52回目である。

【引用はじめ】

 バックワード・チェイニング  一連の行動の連鎖(Chain)を、最後から逆順に強化してゆく

 バックワード・チェイニングは、最初の行動からではなく最後の行動から逆順にやっていくものだ。

 営業の例で言えば、新人にはまず、新規顧客から新規契約をいただくことではなく、既存顧客からリピート受注を得るところから仕事を始めさせるのである。

 新人が、飛び込み営業で新規顧客を開拓し、そこから注文をいただき、さらにはリピート受注をいただけるようになるまでには、相当の期間がかかる。問題は、それまで、新人営業は「勝ち味」を覚えられないということである。注文をいただくことは可能なことであると思えるか思えないかで、営業担当者の姿勢や行動には微妙な差が出てくる。そしてその差が、その後の成果を左右する。

 注文をいただいた経験のない営業担当者は、自分が注文をいただけると信じることができず、いわば「負けモード」で営業することになる。それでは、実際に注文をいただくことは極めて難しくなる。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.73~p.74

【引用おわり】

 バックワード・チェイニングによって、一連の行動を身につけさせることは応用範囲が広い。

 靴下を子どもにはかせる方法に使える。まず始めに靴下をはかせて、先端部だけ途中までしか上げない。それを子どもが引っ張り上げて靴下をはいたら強化する。

 それができるようになったら、今度はくるぶしまで靴下をはかせて、子どもがそこから引っ張り上げてきちっと靴下をはくことができたら強化する。

 それがきちっとできるようになったら、つま先まで靴下をはかせて子どもが一人で靴下をはけたら強化する。

 最後に靴下を一人ではくことができたら強化するのだ。靴下をはくのに最後から逆順に、一連の靴下をはく行動を連鎖させるのである。 

2021年2月24日水曜日

チェイニングでスピーディに業績をあげる

 新人などには、契約をとるまで多くのハードルがあって、心折れそうになりかねない。少しでも、それを取り除けながら前に進める方法を使ったほうがいい。それがチェイニングである。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第51回目である。

【引用はじめ】

 名刺交換ができて、自社紹介をし、次にニーズを聴くためのアポがとれたら、ここで強化する。それがチェイニングだ。そしてこのように順次、次の段階ができるようになったら、それを強化してゆく。すると、途中で心が折れることもなく、長々と暗中模索することもなく、快適にスピーディに業績があげられるようになる。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.72~p.73

【引用おわり】

 チェイニングによって、契約ができ受注できたとなれば新人には大きな成果となり、会社にとっても大きな利益となる。適切なチェイニングが用いることができれば、社員、顧客、そして会社もウィン・ウィンの関係を築ける。特に、新人にはあまり失敗をせずに契約・受注までこぎつける可能性が大きい。

 新人研修において、チェイニングの工夫は成果の正否にかかわるとも言える。

2021年2月23日火曜日

フォワード(順行)・チェイニング

 新人にとって、契約をとって受注までもっていくには、並大抵のことではない。それをうまく契約につなげるまでの一つ一つの行動を順番に強化するのがチェイニングと言われる方法だ。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第50回目である。

【引用はじめ】

 フォワード(順行)・チェイニング

 手前の行動が身についたらその次の行動を強化する

 「名刺交換する」できた(強化①)→「自社を紹介する」できた(強化②

→「ニーズを聴く」できた(強化③→「提案をする」できた(強化④→「条件を詰める」できた(強化⑤

→「契約する」できた(強⑥→「受注をする」 

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.71

【引用おわり】

 営業の始まりは、名刺交換によって営業先より知ってもらい、営業をかける相手とコンタクトをとれるようにしなければならない。そうしたことがまずスムーズにできるようにすることだ。

 それができたら、自社のことを知ってもらい、相手のニーズに合った製品を提案する。こうした行動ができたら強化し、次の行動に進んでいく。お互いの条件を詰めて、契約・受注できるところまで進めるのである。

 こうした一連の行動が文字どおりとはいかないだろうが、その場合は行きつ戻りつしながら進めてゆくのだ。単なる、試行錯誤で見通しのないやり方よりずっといい。

2021年2月22日月曜日

新人にとって飛び込み営業だけでは難しい

 新人に対して、「ただ売ってこい」と言っても、何をしたらいいか分からず戸惑うことばかりである。失敗ばかりが続けば、やる気にも影響してくる。もっと計画的な手法を用いるべきである。それがチェイニングと呼ばれるものだ。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第49回目である。

【引用はじめ】

 チェイニングにはフォワード(順行)・チェイニングとバックワード(逆行)・チェイニングの2種類がある。

 フォワード・チェイニングは、一連の行動の連鎖を、手前から順番に強化してゆく。営業の例で言えば、新人にはまず名刺交換することから強化してゆくのである。

 たとえば新人に、「ともかく売ってこい」と飛び込み営業させても、相手の名詞をいただくことすら簡単なことではない。

 そこで、第一段階としては、名刺交換をしてくることを日々の達成目標として、それが達成できた日はきちんと認めてあげる。また、累積で100枚とか1000枚とかいただけたら、その都度ちょっとした祝杯をあげる。そうすれば、飛び込み営業の日々は、恐怖と絶望の日々ではなく、意欲と達成の日々になる。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.69~p.70

【引用おわり】

 一連の行動の連鎖を順番に少しずつ強化していって、最終的な行動まで到達させるようにする。これがチェイニングのやり方である。前から順番に強化するやり方と最後から強化するやり方がある。

2021年2月21日日曜日

チェイニング「一連の行動の連鎖を順番に強化」

  段階的に強化してゆく方法が、シェイピングである。それに対して、一連の行動の連鎖を順序良く強化するのがチェイニングだ。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第48回目である。

【引用はじめ】

 新人が営業できるようになるということは、営業のプロセスを構成するいくつもの行動が、全てできるようになるということである。たとえば新規営業の場合には、

  1. 名刺を交換する
  2. 自社や自社製品を上手に紹介する
  3. ニーズを正確に聴きとる
  4. ニーズを満たす提案をする
  5. 価格や納期などの条件を詰める
  6. 契約を結び、受注する
  7. 継続的にリピート受注を得る
 といった7つの行動が、鎖のようにつながり、その長い鎖が途中で途切れずに最後まで、いけるようになって、やっと成果に結びつく。
 たいていの人は、この一連の行動を、暗中模索の試行錯誤の中で身につけてゆく。ただ、それでは時間がかかるのが難点だ。
 暗中模索の試行錯誤では、モチベーションが続かない人もいる。日々の成長が確実に感じられ、自他ともに認められるのと、いつまで経っても自分がどれだけ伸びたのか判然としないのとでは、仕事に取り組む姿勢も変わってくる。
 こういう場合にはチェイニングを使うのである。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.68~p.69

【引用おわり】

 一連の行動をつなげて順番に強化してゆくことで、効率的に適切な行動を身につけてゆくのがチェイニングという手法である。試行錯誤をできるだけ少なくする方法として有効である。一連の行動のつながりを分析することが重要である。 

2021年2月20日土曜日

山本五十六の名言

  山本五十六の有名な言葉がある。

 「やって見せ、言ってきかせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」という言葉だ。それを行動分析学的に解釈できる。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第47回目である。

【引用はじめ】

 山本五十六の名言

  • やってみせ   ← モデリング 
  • 言ってきかせて ← 言語的指示
  • させてみて   ← 行動(試行)
  • 褒めてやらねば ← 強化
  • 人は動かじ   ← 行動(定着)
 人を行動させるということについて、命がけの探求をしているのは軍隊である。山本五十六(海軍大将)の言葉は、行動分析学的に人を動かすエッセンスが凝縮されている。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.65~p.66

【引用おわり】

 大事な行動が定着するまでどのようにすればいいかを端的に表現しているのが、山本五十六の名言である。

 モデリングや言語的指示によって、行動のきっかけとなる刺激を与える。正しい行動をしたら、直ちに強化する。その行動がしっかりできるようになるまで強化するのである。山本五十六はいい言葉を残してくれた。 

2021年2月19日金曜日

行動の定着には強化が不可欠

  行動のきっかけとなる「言語指示」「モデリング」「身体的誘導」なども大事だ。しかし、行動を定着するには「強化」しなければならない。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第46回目である。

【引用はじめ】

 行動のきっかけとなる刺激は、正しい行動を引き起こしはするが、定着はさせない。つまり正しい行動を身につけさせるには、やはり強化が不可欠である。

 会議で進行役の上司が参加者である部下に対して「誰か意見はないか?」と聞いたときに、それに触発されて意見を述べる部下がいたら、上司はその部下に対し、

  • 好意的な目を向ける
  • 話を真剣に聞く
  • 「なるほど」と感心する
 などの強化をしなければならない。もしも、「意見はないか?」と促されて意見を述べたのに、部下の話が無視されたり(消去)、馬鹿にされたり(弱化)したら、その部下はもう、意見を言うという行動はしなくなるはずだ。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.63~p.64

【引用おわり】

 行動の直前の刺激である「言語指示」「モデリング」「身体的誘導」は、適切な行動を促す。ただ、それだけでは十分とは言えない。行動の直後の強化も必要である。そうでなければ、適切な行動は定着しないからである。 

2021年2月18日木曜日

職場における行動のきっかけとなる刺激

  行動の適切なきっかけによって、職場などにおいてもしっかりした行動を身につける。その行動のきっかけとなる刺激が「言語指示」「モデリング」「身体的誘導」などであった。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第45回目である。

【引用はじめ】

 職場における行動のきっかけとなる刺激の例

  • 言語的指示  会議で「何か意見はないか?」と聞く  マニュアル
  • モデリング  先輩が「背中を見せる」  ビデオ
  • 身体的誘導  接客の姿勢を直す
 行動のきっかけとなる刺激は、職場でも使える。たとえば、会議では皆が「発言する」のが望ましい行動だ。しかし、もし誰も発言しなかったら、議長は「何か意見はありませんか?」と聞いて、発言するという行動を促すための言語的指示をする。また、業務マニュアルなども、言葉で記述してあるので言語的指示である。

 モデリングは、先輩が「背中を見せる」ことであり、先輩がモデル(模範)となって正しい行動をしてみせ、後輩はそれを見て学ぶ。また、営業研修などで、凄腕セールスマンが登場するビデオを使って正しい営業の仕方を学ばせたりする。

 身体的誘導は、接客業において、新人のお辞儀の仕方が悪いときなどに、指導者が新人の体に手をかけて、悪いところを矯正するなどである。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.61~p.62

【引用おわり】

 職場における新人を育てるには、行動のきっかけになる刺激を工夫する必要がある。それが「言語的指示」「モデリング」「身体的誘導」である。それらは計画的に行うことで、新人育成に大いに役立つ方法である。 

2021年2月17日水曜日

行動が自然とできるようになったときとは

  適切な行動を自分のものにするには、意識せず自然にできるようにすることである。「言語指示」「モデリング」「身体的誘導」などがなくても、適切に行動ができるようになることだ。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第44回目である。

【引用はじめ】

 人が行動を真に学習したと言えるのは、その行動を自然とできるようになったときであるが、自然に行動できるということは、その行動を感覚的(無意識的)に制御しているということだ。

 スイングしながら「腰はこの位置まで回す」「手の角度は〇度!」などと頭の中で言葉を発するのは、ゴルフ漫画の世界であって実際のプロはそのようなことはしない。ゴルフに限らず何でも、私たちは最終的には感覚的(無意識的)に正しい行動ができるようにならなければならない。ということは、行動を学習するということは、本質的には行動の感覚を身につけることだと言えるだろう。

 その正しい感覚を感じさせるために、行動のきっかけとなる刺激があるのだ。だから、言語的指示だけで感覚を理解することができないときには、より感覚的理解のできるモデリングが用いられ、それでも足りないときには、実際に自分の体に正しい行動を感じさせる身体的誘導が有効なのである。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.60~p.61

【引用おわり】

 私たちが求めるのは、感覚的に正しく求める行動ができるようにすることだ。

 そうなるためには、行動の直後に強化したり、行動のきっかけに求める行動が促される刺激を与えるのである。それが「言語指示」「モデリング」「身体的誘導」なのだ。 

2021年2月16日火曜日

身体的誘導とは

  行動のきっかけとなる刺激は、「言語的指示」「モデリング」「身体的促進」の3種類がある。「言語的指示」「モデリング」については前々回と前回に説明した。今回は「身体的促進」である。手とり足とりして教えるやり方である。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第43回目である。

【引用はじめ】

 身体的誘導とは、文字通り手とり足とり教えることだ。たとえばゴルフではよく「腰を回せ」と言われる。これは言語的指示である。だが、本人としては回しているつもりでも、実際には全然回転していないことが、よくある。

 すると先生が「もっと回せ」と再び言語的指示を与えるわけだが、それでも十分には回らない。そうしたときに、先生が、「ここまで回すんだ」と言いながら、生徒の腰に手を当てて、ぐっと回す。これが身体的誘導である。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.60

【引用おわり】

 人というのは、言われた通りにできるかというとそううまくいかない。見本通りにできるかというとそのとおりにはいかない。

 そうなると、手とり足とりとして教えることになる。これが「身体促進」というやり方である。最初はしっかりと手とり足とりするのだが、だんだんとその程度を少なくしていくのがコツである。 

2021年2月15日月曜日

モデリングとは

  行動のきっかけとなる刺激は、「言語的指示」「モデリング」「身体的促進」の3種類がある。「言語的指示」については前回説明した。今回は「モデリング」だ。文字通り、模範を示して相手がそのとおりするように促すやり方である。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第42回目である。

【引用はじめ】

 モデリングとは、モデルを見せる、つまり模範を示すということだ。ゴルフでいうなら先生が正しいスイングをやってみせたり、プロのスイングを見せたりするのがそれにあたる。

 長嶋茂雄という野球の天才は、後輩から電話でバッティングのアドバイスを求められ、「こう振るんだ、こう」と、電話の向こうで素振りをしてみせたという。

 ちょっと聞くと笑い話にしか聞こえないが、しかし、私たちが身につけるべき行動の中には、どうしても言葉では伝わりきらない部分が実はかなりあり、それを技能移転するためにはモデリングが極めて重要な役割を果たすことを、このエピソードは教えている。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.59~p.60

【引用おわり】

 まずやって見せて、それを見た初心者がそのとおりするようにするやり方が「モデリング」である。そのとおりすぐできるかというと、そううまくいかないことも多い。それを繰り返しやって見せたり、動きを分解してやって見せたりして、徐々にモデルどおりやれるようにする。それが「モデリング」の手法である。 

2021年2月14日日曜日

言語的指示とは

  行動のきっかけとなる刺激「言語的指示」「モデリング」「身体的促進」の3つがある。そのうち、「言語的指示」は多く使われるものである。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第41回目である。

【引用はじめ】

 言語的指示とは、正しい行動を、言葉によって促進することである。「こうやってみなさい」という指示、「これをやれ」という命令、「こうしてみたら?」という提案である。

 また、日常生活において「〇〇してくれませんか?」と依頼することも、やはりそうだ。言語的指示は、人間の世界では最も多く使われる行動のきっかけとなる刺激である。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.59

【引用おわり】

 言語的指示が適切に使われれば、期待通りの行動ができるようになる。言語による指示、命令、提案などを適宜使い分ける必要がある。相手が理解できる言語内容であることを工夫することである。相手との間柄なども考慮しなければならない。親しい関係か、遠い関係か、上司と部下の関係かなどである。 

2021年2月13日土曜日

行動のきっかけとなる刺激

  新しい行動を身につけるには、強化するだけではなく、行動のきっかけとなる刺激なども利用するやり方がある。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第40回目である。

【引用はじめ】

 新しい行動を身につけるときには、強化の他にも正しい行動が起きる確率を高めるための方法がある。強化はあくまで行動の直後に行うものだが、これはむしろ行動の前に行われる。また、強化をすると相手はその行動を一生懸命にやるようになるが、行動のきっかけとなる刺激を与えても、相手が一生懸命にやるようになるかというと、それはまた別の話である。

 行動のきっかけとなる刺激には、次のような3種類がある。

  • 言語的指示
  • モデリング
  • 身体的誘導

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.59

【引用おわり】

 行動がうまくいくようなきっかけづくりには、3つの方法がある。「言語的指示」「モデリング」「身体的誘導」であり、これと行動の直後の強化を付け加えれば、うまくいく確率は高まる。行動のきっかけの直前の3種の刺激で目指す行動を引き出し、その直後に強化するのである。 

2021年2月12日金曜日

褒めるだけでなく正しい行動を教える

  ゴルフが上達するには、褒めるだけではうまくいかないこともある。その時は、手とり足とり教える。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第39回目である。

【引用はじめ】

 ゴルフを教えるときには、ただ褒めるだけでなく他にもいろいろなことをする。

 クラブの振り方を説明したり、先生がやってみせたり、生徒の体勢を先生が手とり足とり直したりする。そうするのは、生徒が正しくスイングできるようになりやすいからである。まっすぐ飛ばすための振り方や、距離を出すための振り方などにはポイントがある。それを生徒自身の試行錯誤だけで見つけ出させるのは非常に難しく、時間がかかってしまう。だから、正しいスイングができるよう、先生があの手この手を使う。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.58

【引用おわり】

 ゴルフの初心者にとって、試行錯誤によって上達させるのは並大抵のことでない。それよりも、正しいスイングの仕方のポイントを教えたり、見本を示したり、手足をとって動き方を指導したりすることで、学びやすくなる。

 

2021年2月11日木曜日

飛距離の出る速いスイングができるステップ

  ゴルフボールをまっすぐ飛ばせるようになったら、今度は速くスイングして遠くへ飛ばせる練習をする。しかし、これは結構難しい。シェイピングによって徐々に確実に遠くへ飛ばせる練習を続けるのである。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第38回目である。

【引用はじめ】

 打球がまっすぐ飛ぶようになったら、いよいよ今度はスイングスピードを上げて飛距離を出してゆく段階へと移る。「〇〇ヤードも飛んだ」など、目標の飛距離を超えたら褒める。

 ただ、多くの初心者は、速くスイングしようとすると軌道が乱れ、ボールが飛ばなくなる。前段階の行動ができなくなってしまったときには、いったん前の段階に戻って、強化をし直すのがシェイピングのセオリーだ。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.55~p.56

【引用おわり】

 シェイピングにおいては、次の段階に移るとうまくできないことがしばしば起きる。そうした場合は、前の段階に戻ってやり直すことにちゅうちょしないことが大事となる。それが確実にできたら自信を取り戻して、もう一度次の段階に進めばいい。行きつ戻りつはあってもいい。難しい行動であればあるほどこうしたことって多くなることは覚悟のうえである。 

2021年2月10日水曜日

ゴルフボールをまっすぐ飛ばす行動の強化

  ゴルフの初心者は、クラブを振ることに慣れ、次にボールに当てることができるようなったら、次に目指すは「まっすぐ飛ばす」ことができるようにすることである。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第37回目である。

【引用はじめ】

 ボールに当てるということが難なくできるようになったら、次は、まっすぐ飛ばすという行動を強化する。打球がまっすぐ飛んだら「いい球だ」と褒めるとか、10球連続でまっすぐ飛んだら褒めるといったことをする。

 ここでもポイントは、この段階に至ったら、もうクラブを振るだけや、ボールに当てるだけのことでは褒めないという点である。

 シェイピングでは、レベルの低い行動ができたら、今度は一段高い行動を強化することで、相手のレベルをステップ・バイ・ステップであげてゆき、最終目標とする行動へと近づけてゆくのである。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.55~p.56

【引用おわり】

 ゴルフが確実に上達するようにするために段階的な練習を続ける。

 第1段階では、「クラブを振ることが好きになる」にようにする。

 第2段階では、「ボールを当てる」ことができるようにする。

 そして、第3段階では、「まっすぐ飛ばす」ことができるようにするのである。

 さらに上手にするには、次のステップの練習が必要となる。こうしたシェイピングによって、確実にゴルフが上達していけば挫折することなくゴルフを続けられる。 

2021年2月9日火曜日

クラブを振る動作に慣れたら、次はボールに当てる行動を強化

  ゴルフの初心者を上達させるために、まずはゴルフクラブの振り方の練習をする。上手にスイングできるようにするのが第一段階である。次の段階はボールに当てる練習だ。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第36回目である。

【引用はじめ】

 クラブを振るという動作に慣れたら、次はボールに当てるという行動の強化に移る。クラブを振らせて、ボールに当たったら、「当たった! オーケー」と褒めてあげるのもよいし、10発連続で当たったら褒める、というのでもよいだろう。

 ここでのポイントは、この段階になったら、クラブを振ってもボールに当たらなければ、もう褒めない、つまり強化はしないという点である。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.54

【引用おわり】

 ゴルフクラブのスイングが上手になったら、次にボールに当てる練習を繰り返す。ボールに確実に当てられるようにするまで練習を繰り返すのだ。シェイピングの第二段階である。

2021年2月8日月曜日

ゴルフクラブを振る行動から強化する

 ゴルフの初心者にとって、ゴルフクラブを上手に振ることができるようにするのが大事だ。それによって、ゴルフ好きにするところから始める必要がある。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第35回目である。

【引用はじめ】

 まずはクラブを振る行動をから強化する。振るたびに「良いスイングだ!」と褒めてもいいし、100回振るという目標を立てておいて、それが達成できたら褒める、というのでもよいだろう。何回振るというような目標は、達成できたことが自分でも分かるから、達成感も得やすくていいだろう。

 このようなことから始めると、まずクラブを振ること自体が好きになる。「クラブに親しむ」状態ができる。好きこそものの上手なれというが、まずはとにかくクラブを振ることが好きになれば、たくさん振るようになるから、それだけ上達するようになる。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.53

【引用おわり】

 ゴルフクラブを振る練習を楽しくやれるようにすれば、ゴルフが好きになり、ゴルフの上達につながる。

 クラブの振り方が上手になることがゴルフ上達の第一歩である。ゴルフ上達のためのシェイピングの第一段階である。 

2021年2月7日日曜日

段階的に目標行動を身につけるのがシェイピング

 簡単には身につかない行動を身につけるようにするには、段階的にステップアップする方法を使うのがいい。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第34回目である。

【引用はじめ】

 私たちが身につけようとする行動には、一朝一夕には身につかない難しいものが多い。

 たとえばゴルフで、初心者が格好良く打てるようになりたいと思っても、そう簡単にはいかない。まずはボールに当てるのが一苦労。まっすぐ飛ばすなどは、なかなかできることではないし、ましてや飛距離を出すために速くスイングなどしようものなら、まっすぐ飛ばないどころかボールにすら当たらず、格好悪い空振りに終わってしまうこともある。それを繰り返しいるうちに、やがてクラブを振ることも嫌になる。

 そこで、こういう場合にはシェイピングという方法を使う。シェイピングとは、ある目標行動に向かって、段階的に強化(弱化)してゆく方法である。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.51~p.52

【引用おわり】

 シェイピングは目標に向かって、容易なところから困難なところまで段階的に強化していく方法である。系統的・計画的に進めていけば、難しい行動でも身につけることができる。シェイピングをうまく使えば、嫌になって諦めことなしに続けることができるのだ。個々人に合わせてのスモールステップが必要だが。 

2021年2月6日土曜日

連続強化から部分強化に切り替える

 大事な行動を維持するには、初めは連続強化で行動を形成し、その後部分強化を続け、徐々に強化の頻度を下げていく。ただ、強化は時おりし続けることがその行動を維持することになる。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第33回目である。

【引用はじめ】

 新入社員に仕事を教えるときは、まずつきっきりで、やり方を教え、やらせてみて、できたら褒めることをしばらく続ける。つきっきりで本人の行動を見てあげて、できるたびに褒めてあげるほうが、本人の伸びが早いからだ。連続強化をすることになる。

 いつまでもそれを続けていると、今度は、褒められないと動かなくなる人になりかねない。それでは一人前になったとは言えない。それに、教える側も、いつまでもつきっきりで指導するわけにはゆかない。

 そこで、新しい仕事に習熟するまでは連続強化を行い、それに慣れてきたら今度は2回に1回褒めるようにし、次に3回に1回、そして4回に1回という具合に、強化の頻度を下げていく。部分強化に切り替えてゆくのである。部分強化には行動を維持する効果があるので、褒められなくてもきちんと仕事をする人が育つ。

 ただ、初めのうちは毎回褒めるが、ある日から全く褒めなくなるというのは駄目だ。褒めないというのは「消去」だから、行動が減ってしまう。だから段々と頻度を下げながらも、強化は続けることが必要だ。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.49~p.50

【引用おわり】

 まずはしっかりと連続強化によって新入社員が一人で仕事ができるようにすることである。自立的に仕事ができるようになったら、部分強化によって励ましたりすることを忘れてはならない。もちろん、その部分強化の頻度はだんだん減らすことになる。でも、たまには声がけしていい仕事を褒めることを忘れてはならない。 

2021年2月5日金曜日

連続強化と部分強化

 行動に対する強化を連続的にするか、部分的にするかで、行動の効果がかわる。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第32回目である。

【引用はじめ】

 ある行動をするたびに強化をすることを連続強化、何回かに一回強化することを部分強化という。

 連続強化には行動を早く身につけさせる効果があり、部分強化には行動を維持させる効果がある。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.48

【引用おわり】

 連続強化は、行動するたびに強化することであり、部分強化は何回に一回だけ行動の後に強化することだ。その強化の違いが行動を身につける様相を変えることになる。

 始めは連続強化で行動を早く身につけさせ、その後は部分強化で行動の維持に努めるのがいい。 

2021年2月4日木曜日

60秒ルールは弱化にも当てはまる

 規則破りがあったら、その直後に叱らないとためだ。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第31回目である。

【引用はじめ】

 弱化にも、60秒ルールは当てはまる。たとえば、規則を破るという行動を弱化しようと思ったら、破った直後に叱るのがよい。あとになって叱っても、行動を正す効果は低くなってしまう。

 私たちは、規則破りを目にしたら、その場では叱りそびれ(結果的に黙認してしまい)、そのことをずっと気にしているうちに、あとになって、「あのときの、君のあの行動は、いけなかった」などと言ってはいないだろうか。

 忘れた頃になって叱られても、本人としてはピンと来ない。だが、このやり方では本人の行動は改善されにくい。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.47

【引用おわり】

 問題行動が生じたら、その直後に叱るなどの弱化が必要だ。それによって、問題行動を減らすのである。行動の直後60秒以内に叱ったりすることが大事である。

2021年2月3日水曜日

行動の直後に達成感がある

 行動の直後に達成感が得られるといったことがあれば、その行動は強化される。それも行動の直後60秒以内の達成感である。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第30回目である。

【引用はじめ】

 私たちが毎日仕事をしているのは、どういう心のメカニズムによっているのか。

 「きょうは、これとこれをやる」と目標を定め、それをやる。そして、それができたら「おわった!」「できた!」達成感を感じる。

 これが、仕事を生き生きとしている人の、心の動きである。この場合、目標達成の直後に達成感を感じるから、60秒ルールにかなっていると言える。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.44~p.45

【引用おわり】

 行動の3つの原理、強化、消去、弱化が機能するためには、行動の直後60秒以内の状況がどうなるかで決まる。行動の原因を考えるには、行動の直後60秒以内がどのようになっているかを明らかにすることだ。 

2021年2月2日火曜日

60秒ルール(直後ルール)

 人の行動を制御する原理は、強化・消去・弱化の3つであった。行動の直後にどのようなタイミングでその原理を使えばよいか。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第29回目である。

【引用はじめ】

 人の行動が強化されるか、消去されるか、弱化されるかは、行動の「直後」に何が起こるかで決まる。

 直後とは、実証的研究の結果、行動後の60秒以内である。

 だから、意識的に強化や弱化をしようとしたら、行動後の1分間でそれができるような工夫と努力をしなければならない。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.43~p.44

【引用おわり】

 効果的に行動の原理を使わないと、うまく行動の制御はできない。行動の直後に行動の原理を使う必要がある。それが60秒以内ということになる。行動の直後60秒以内に強化・消去・弱化を使うと、行動の制御がうまくできるようになる。 

2021年2月1日月曜日

パワハラに対しては断固として弱化すべき

 パワハラやセクハラに対して、私たちはどう対応すればいいのか。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第28回目である。

【引用はじめ】

 悪い行動を減らすために、消去よりも弱化を使ったほうがよい理由は次のようなこともある。

 それは、消去ではバーストが起きる可能性があるということだ。

 たとえば職場でセクハラやパワハラ(パワーハラスメント)があるとき、その人の行動を完璧に無視するという消去によって、最終的にその行動は収まるかもしれない。しかし、その過程においてバーストが起こり、一時的とはいえ行動がエスカレートしてしまうかもしれない。

 それでは、いけない。だから、ハラスメントに対しては、やはり断固とした対処(弱化)をして、行動を速やかに止めるべきなのである。

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.42

【引用おわり】

 セクハラやパワハラを見逃してやり過ごすことはできない。消去ではますます相手を増長させてしまう。なすがままにしていてはだめだ。はっきりと嫌だと意思表示による弱化に努めることだ。相手の弱さにつけこんで何回も繰り返してくる。最初に強く抵抗を示す必要がある。消去によってバーストを起こさせては被害を大きくさせてしまうからだ。