2019年9月30日月曜日

問題を抱える人々を理解する

 専門の支援者を育てる話の30回目。
 「豊かな人間性」を支える専門スキルとして「問題を抱える人々を理解する」ことが大事だ。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 問題を抱える人々を理解することは、信頼関係を築き、支援の計画を立てるための土台である。
 この土台から支援は開始されていく。
 もし人々への理解が深ければ、支援も深まる。
 しかし理解が表面的になれば、それだけ支援も表面的になってしまう。
 また人々を理解することは、それ自体が重要な支援でもある。
 人々は、自分自身をよく理解してもえらえるとき、心が癒され、力を得ていく。
 そしてさらに積極的に支援を受けようとする。   
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.117、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 支援にあたっては、利用者等の「理解」が大事である。
 障がいゆえに問題が生じているとの一面的な見方では、真の理解とは言えない。
 利用者が個別に抱える事情もよく理解しなければならない。
 問題が生ずる背景の必然性に同レベルの親近感を持つことである。

2019年9月29日日曜日

ストレングス視点

 専門の支援者を育てる話の29回目。
 「豊かな人間性」を支える専門スキルとして「ストレングス視点」を持つことが重要だ。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 人には弱い面もあれば、強い面もある。
 弱いところを突かれ、そこを改善することだけを求められたら、人々は気落ちしてしまうだろう。
 なぜなら、助けを必要としている人々の多くは、さまざまな弱さ、問題、悪い習慣に苦しんでいるからだ。
 支援者として、人々の強さ―ストレングスにもっと目を向けることだ。
 そうするならば、彼らの笑顔は戻り、支援という道をいっしょに歩きだすに違いない。  
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.115、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

  支援者は、利用者のストレングスを見出すことが大事になる。
 あれもできない、これもできないといった弱さばかりに目が行きがち。
 そのなかでも、ストレングスが必ずある。
 そこから支援のあり方を見出すのである。
 それを続けていけば、利用者との距離が縮まる。

2019年9月28日土曜日

傾聴と共感力

 専門の支援者を育てる話の28回目。
 「豊かな人間性」を支える専門スキルとして「傾聴と共感力」が重要だ。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】
 
 傾聴とは、相手の話をよく聴こうとすることである。
 また、相手から発せられる言葉と感情、メッセージに気づこうとする姿勢である。
 こうした姿勢が共感を生む。
 共感とは、相手の気持ちを共に感じることである。 
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.101、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 傾聴は共感と表裏一体のものである。
 利用者をよく知ることでもある。
 利用者は何で困っているか、よくその様子を見て適切な援助に努める。
 そこが傾聴の態度であり、利用者への共感が生まれ、適切な対応も可能なのだ。

2019年9月27日金曜日

人の信頼を勝ちえる力

 専門の支援者を育てる話の27回目。
 「豊かな人間性」を支える専門スキルとして「人の信頼を勝ちえる力」が重要だ。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 信頼関係とは、共感的な関係である。
 それは利用者のありのままに受け止めることに始まり、彼らの話を聴き、その痛みや感情に共感していくことで深められる。
 つまり「受容」「傾聴」、そして「共感」のスキルを向上させることが、信頼関係を築くことにつながる。
 「もし相手の信頼を勝ちえるならば、支援の半分以上はすでに終わっている。しかし信頼を勝ちえることができなければ、支援は成り立たない」。  
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.98、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 信頼は、相手の痛みに共感できて始めて得られる。
 相手の実情をよく理解することだ。
 その大変さや問題を受け入れ、共感するのだ。
 それによって相手の信頼を得られる。
 

2019年9月26日木曜日

ディレンマを乗り越える

 専門の支援者を育てる話の26回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「ディレンマを乗り越える力」を身につける必要がある。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 実践現場において、支援者は、利用者の価値観とのディレンマだけではなく、同僚、ほかの専門職、あるいは所属する組織の価値観とのディレンマを幾度も経験する。
 その場合、支援者の上下関係や力関係により、価値観を押し付けたり、押し付けられたりする。
 さらに社会資源が不足することで、思うように利用者の決定を支援できない現実にぶつかる。
 ディレンマとは、相反する二つの考えの板ばさみに合い、決めかねる状態である。
 解決法がみえないなかでも、支援者は、どちらかを優先し、決定していかなければならない。 
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.87、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 支援者は、実践のなかで利用者にとってどちらを選択すべきか迷うことは多い。
 最善の選択といっても、妥協が強いられたりするのだ。
 理想どおりにいかない。
 その場合でも、自分にとってより良い選択に努めることしかない。
 現実を踏まえ、その中でもより良い選択である。

2019年9月25日水曜日

ソーシャル・インクルージョンって何?

 専門の支援者を育てる話の25回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として、「ソーシャル・インクルージョン」といったどんな境遇にある人も包み込む力が必要だ。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 ソーシャル・インクルージョンとは、社会で暮らすすべての人々を孤立や孤独、排除、摩擦などから守り、互いに包み合い、支え合うという理念である。
 こうした理念を実現するには、まず孤立する人々、孤独な人々、排除された人々、摩擦に苦しむ人々の真実の姿に気づき、支援者としての立場から、何ができるのかを考え、実践することである。  
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.83、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 身近な所で苦しんでいる人びとがいる。
 そうした人びとに対して、関心をもつことである。
 そして、支援者としてできることを考えよう。
 相手の立場でどんなことができるかを考える。
 困っている人への寄り添う姿勢こそ、支援者としての資質を高める力である。

2019年9月24日火曜日

社会正義の実現

 専門の支援者を育てる話の24回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「社会の不正義」に敏感であることも大切だ。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 現代は、競争社会であり、多数派の陰で、少数派の権利が侵害されるという不正義がみられる。
 障害のある人々が施設から出て町で暮らそうとするとき、地域住民が反対するなどの行為は、明らかに不正義である。
 施設で働く支援者は、自分の組織のなかのことに目を奪われ、地域社会で起こっている不正義にまで興味を抱く機会に乏しい。
 しかし、もし支援の力を高めたければ、地域社会に起こるさまざまな不正義を解決することに協力してほしい。  
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.81、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 障害者は少数派であり、その権利が平気で侵害されている場合がある。
 偏見や差別が今もってなくならない。
 虐待されて悲惨な状況を呈したケースもみられる。
 こうした社会の不正義に目をつぶらない。
 それが支援者の役割でもある。
 より良い社会を創り上げることだ。

2019年9月23日月曜日

プライバシーと秘密保持

 専門の支援者を育てる話の23回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「プライバシーの尊重」の重要性について理解する必要がある。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 支援者は、問題を抱える人々と話し合うとき、さまざまな個人情報や領域に立ち入ることになる。
 つまりプライバシーの一部を共有しなければ、支援していくことができない。
 だからこそ、支援者には、ほんとうに必要な情報を収集し、それ以外のプライバシーに最大限、配慮することが不可欠である。
 そして、いったん知りえた情報に関しては、厳粛に秘密を保持するという約束が伴う。
 この約束があって初めて、人々は自分のプライバシーを分かち合ってくれるのである。 
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.75、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 利用者のプライバシーを大事にするのは、当然である。
 しかし、支援するにはプライバシーにかかわる情報を知らなければ適切な支援を行うことができない。
 支援に必要な情報については、他に漏らさない倫理基準をもって対応しなければならない。

2019年9月22日日曜日

受容の大切さを知ろう

 専門の支援者を育てる話の22回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「受容すること」の大切さを理解しよう。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 多くの人が「受容は理想である」とか「受容だけでは支援できない」と主張する。
 人々がそういうのは、ほんとうの意味での受容を理解していなからだと感じる。
 支援者の多くは受容が単に、相手に優しい言葉をかけ、時には大目にみて、甘やかすことだと思い違いをしている。
 受容とは支援の手法の一つではなく、 根底におくべき資質である。
 うわべではなく、その人間のあるべき姿を見極めることであり、それをその当事者にも理解させることである。
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.72、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 受容とは、利用者のありのままを理解することである。
 また、そのありのままを認めることでもある。
 支援者として、利用者の今ある姿を受け入れ、あるべき姿への支援のあり方を工夫するのである。

2019年9月21日土曜日

利用者の自己決定を尊重すること

 専門の支援者を育てる話の21回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「利用者の自己決定を尊重すること」とは何か、絶えず自問自答する必要がある。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 私たちは支援者として自問しなくてはならない。
 「一体、私たちが考えているプランを利用者や家族は十分に知っているのだろうか?」
 「どのくらい目標に近づいたのかを、きちんと評価しているだろうか?」
 「利用者は、自分のサービスやプランについて意見をいい、決定に参加しているだろうか?」
 支援とは利用者のものであり、利用者の自己決定を尊び、彼らの願いを最優先にかなえていくことなのだから。    
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.66、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 支援者は、障害の実情に応じた自己決定ができる工夫を行うべきである。
 個別支援計画の立案において、利用者と保護者が承認する。
 その場合、署名、捺印をしている。
 利用者にとってその計画を理解しているのだろうか。
 説明が利用者にわかるようなものになっていないケースが多い。
 もっと利用者にとって理解できる個別支援計画のフォーマットを工夫することが求められる。

2019年9月20日金曜日

利用者の利益のために

 専門の支援者を育てる話の20回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「利用者の利益の最優先」といったことに配慮しなければならない。
 そのことに関して、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

  「虐待」などの権利侵害をしないことだけが、利用者の利益を最優先することではない。
 本来、権利侵害をしないことはあたりまえで、利用者のためになる、それ以上の支援を行うことが利益を最優先することである。
 しかし現実には、支援者が権利侵害に陥るケースは減っていない。
 
 問題を抱える人々は、社会的にも経済的にも力が弱められている。
 支援者は、自分の専門的な能力や立場を、こうした人々を支え彼らの力を強めるためにこそ用いるべきである。
 もし支援者が未熟さや怠惰なために自分の能力を十分に出せなかったり、意図的に自分の利益や満足のために濫用するならば、たとえその選びがどんなに小さなものでも、利用者の権利を侵害する道を進み始める。  
 
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.53、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 支援者の存在は、利用者あってのものである。
 利用者のためになる適切な支援がなされてこその支援者なのだ。
 あれもできない、これもできないと利用者をさげすむ態度は、支援者失格である。
 利用者の今ある姿を受け入れることだ。
 そこから、次への方向性を見いだすのが専門的な支援者といえる。
 

2019年9月19日木曜日

人々に捧げる覚悟

 専門の支援者を育てる話の19回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「奉仕の精神」を忘れてはならない。
 そのことの重要性について、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 支援者には、学んだ知識や知恵、そして技術と精神を、人々のために捧げる覚悟が必要だ。
 それこそが専門職なのだ。
 高い報酬を得ていても、そうでなくても、仕事への動機に奉仕の精神がなければ、相手にも自分にも真の力を与えることはできない。 
 
  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.61、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 奉仕というと、ただ働きといったイメージがある。
 そういうことを言っているのでない。
 何のために働くのかということをつきつめることだ。
 単に、お金のために働くことではないはず。
 障害のある人のため支援するという、価値ある仕事に専念し、その喜びを感ずることである。
 それが奉仕という意味である。

2019年9月18日水曜日

偏見や差別は個性の否定

 専門の支援者を育てる話の18回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「人のありのままを尊ぶ力」が大事だ。
 そのことの重要性について、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 小学校のころ、小児麻痺のため、足の不自由な男の子がいた。
 彼が足を引きずりながら歩くので、それが「おもしろい」と何人かの子どもたちは、笑ったり、まねたりした。
 こうした行動はしだいにエスカレートして、彼はいじめの対象となった。
 そしてだれも彼を助ける人がいなかった。
 同じクラスの一人は、大人になり、社会で責任ある地位についた。
 しかし彼はいじめられている男の子を助けなかったことを深く後悔した。
 彼は今でも、その子の悲しい顔、悲痛な顔を思い出すという。
 
  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.56、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 支援者は、人々の違いを尊重しないといけない。
 障害というハンデを理解し、そのハンデに向き合う姿勢が大事だ。
 そうした人々のありのままを尊ぶのである。

2019年9月17日火曜日

可能性を見いだす能力

  専門の支援者を育てる話の17回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「可能性を見いだす能力」が必要だ。
 そのことの重要性について、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 人々が、真に変化、進歩、成長し、自己実現にたどり着けるかどうかは、支援者が、彼らの可能性を見いだし、それをどこまでひきだせるかにかかっている。
 こうした力は、単に「可能性を信じている」というあいまいなものではなく、自分が成長できた経験、さらに人の成長を助けた経験に裏打ちされた確信からもたらされる。
 支援者は、人間の変化や進歩、成長する能力を確信する度合いに応じて、それを実践することができる。
 人間の可能性を見いだし、その能力を最大限に引き出すことは支援者の責務であり、人々を自己実現に導く専門的な能力なのである。

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.53、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 障害のある人の変容は、遅々としている。
 支援者はそうした変容に寄り添っていく必要がある。
 ゆっくりした変容を見据えていくのである。
 変容の可能性を信じて、適時適量の支援を行うのである。

2019年9月16日月曜日

人間の尊厳を輝かす

 専門の支援者を育てる話の16回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「人間の尊厳を輝かせる」ことが大事だと、川村隆彦氏(2006年)は次のように主張する。

 【引用はじめ】

 今、社会は人間の尊厳を否定する行為で満ちている。
 力や立場の弱い者が、日々、虐待、暴力、偏見、差別、排除などの権利侵害の犠牲となっている。
 こうした行為を行う人びとは、ほかの人々の尊厳を理解しないだけでなく、自分にも尊厳があることを忘れている。
 彼らは、自分の尊厳を輝かせる機会を捨てているのだ。
 支援者として、一人ひとりに尊厳があることを、確信しよう。
 その尊厳を輝かせるための小さな実践を続けよう。
 人は自分に尊厳があることに気づいてとき、それを輝かせ、また他者にも認めることができるからだ。 

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.49、2006年、中央法規出版刊)

 【引用おわり】

 人は誰もが尊い存在である。生まれ持った違いを認め、一生涯を生き抜くのである。
 たまたま障害があっても、その人がより良く生きるための支援がなされなければならない。
 その人の尊厳に敬意を払い、適切な支援を行うのである。

2019年9月15日日曜日

自分の価値観の形成

 専門の支援者を育てる話の15回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「自分の価値観と向き合う」ことが大事である。
 そのことについて、川村隆彦氏(2006年)は次のように述べる。

 【引用はじめ】

 「人権」や「社会正義」など、専門職の理想とするべき価値と倫理は、頭だけで理解するものでない。
 それはこれまでの自分の経験や価値観と共鳴させながら、自分自身の根に取り入れていくべきものである。
 人がかけがえのない存在であるという価値観は、暗記するものではなく、自分の経験のなかに発見するものである。
 そして、そのための出発点が、自分自身の価値観と向き合うことなのである。 

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.45)

 【引用おわり】

 人はそれぞれ違った人生を歩む。
 そこで学ぶ捉え方も異なる。
 辛い経験を糧としてより良い人生を歩もうする。
 反対に、同じような経験をしても辛いままの体験を再経験してしまう人生もある。
 辛くて問題になる経験を反面教師として、より良いものにする努力こそ大事にしたい。
 直接的な経験を通じて、より良い価値観の形成が求められる。
 

2019年9月14日土曜日

専門職の価値と倫理を学ぶ

 専門の支援者を育てる話の14回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「専門職の価値と倫理」を学ぶことについて、川村隆彦氏(2006年)は次のように述べる。

 【引用はじめ】

 ある児童養護施設で職員による虐待が発覚した。
 悲しいことに、その中心となっていたのは施設でも指導的な立場の人々であった。
 彼らは、以前から利用者を馬鹿にしたり、いうことを聞かない場合、力づくで押さえつけたりした。
 彼らの人間性に問題があるのは明らかだが、それにもまして、この人々は専門職の価値と倫理を学んだことがなかったようだった。  

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.40)

 【引用おわり】

 専門職の価値と倫理とは、「人間の尊厳」「個性と多様性」「奉仕の精神」「利用者の利益と最優先」「受容」等である。
 こうした内容をしっかり学び、身につけることがなければならない。
 専門職の資質を形づくる土台をなすものである。

2019年9月13日金曜日

セルフ・エスティーム(自尊心)を高める

 専門の支援者を育てる話の13回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「セルフ・エスティーム」を高めることも考慮していないと。
 
 それについて、川村隆彦氏(2006年)は次のように述べる。

 【引用はじめ】

 セルフ・エスティームとは直訳すれば「自尊心」であるが、悪い意味でのプライドや高慢とは違う。
 それは「自分自身が価値ある存在であるという肯定的な感情」であり、人間として存在するための基盤である。
 セルフ・エスティームが低ければ、絶えず自分の価値を人の目にゆだねることになり、結果として人が自分をどう思っているのかばかり気になる。
 しかしセルフ・エスティームが高ければ、自らのすばらしい価値について人と比較する必要はないのだ。

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.31)

 【引用おわり】

 俺は他人よりすごいなどと威張る必要はない。
 そうなると鼻持ちならない。
 他人と比べてどうこうでなく、自分自身に対する信頼感をもつことである。
 自分に対する肯定的な見方といっていい。
 自ら尊ぶ気持ちだ。
 それが「セルフ・エスティーム」ということになる。
 これを高めていって自信ある行動につなげるのだ。

2019年9月12日木曜日

熱意ある対応

 専門の支援者を育てる話の12回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「熱意」も重要だ。
 しかし、「熱意」は簡単に得られるものでない。
 それについて、川村隆彦氏(2006年)は次のように述べる。

 【引用はじめ】

 もし、あなたが、強い熱意を得たいならば、物事や機会を簡単に手にしてはならない。
 人は努力もなしに簡単に手に入れたものを大切にしない。
 それどころかすぐに放りだしてしまう。
 強い熱意を得たいならば、相応の努力と忍耐、犠牲を払った後に得られることを学ぶべきである。
 努力する過程で人は熱意を蓄積できるからである。 

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.30)

 【引用おわり】

 障害のある利用者には、ていねいな支援が必要だ。
 できるだけ失敗のない段階をふんだ支援を繰り返す。
 そうした支援を支えるのは「熱意」ある対応である。

2019年9月11日水曜日

最善を尽くすこと

 専門の支援者を育てる話の11回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「誠実さ」も重要だ。
 それについて、川村隆彦氏(2006年)は次のように述べる。

 【引用はじめ】
 
 施設で寝たきりの高齢者や重度の障害者のおむつを交換したり、体を拭く場合、カーテンをすると、ほんとうに丁寧にやっているかどうかは、利用者と自分自身しかわからない。
 しかし正直な支援者は、どのような状況におかれても最善を尽くそうとする。

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.26)

 【引用おわり】

 どの状況にあっても、全力を尽くして支援に当たる。
 人が見ていないから、利用者は何も言わないからと、適当に済ましてしまう。
 そうしたことを何度もやれば、それでいいんだとなる。
 いい加減な支援がずっと続く。
 利用者には不利益なことは当然だが、支援者に対する信頼はなくなる。
 支援者は周囲からも信頼されなくなる。
 支援者の成長も止まってしまう。

2019年9月10日火曜日

9月のジョイフルDAY

のぞみの家では、休日の過ごし方支援として指定土曜日に希望する利用者の方に対して、調理実習や娯楽活動を支援するジョイフルDAYを行っています。

9月のジョイフルDAYは・・・
午前中の調理実習:季節の芋煮・おにぎり・キャベツときゅうりの浅漬け
午後の娯楽活動 :JA滝山まつり(ヒルズサンピア)めぐり

今回の調理実習では、自分の食べるおにぎりの分量をはかり、自分でにぎりました。
JA滝山まつりでは、のぞみの家の玉こんや、おみやげ用のクッキー、フランクフルトやかき氷など、好きなものを選んで買う利用者の方の姿を見ることができました。












献身さと利己心

 専門の支援者を育てる話の10回目。
 「豊かな人間性」を支える資質として「献身さ」も必要だ。
 それについて、川村隆彦氏(2006年)は次のように述べる。

 【引用はじめ】
 
 献身的な人は、たとえ自分の働きが、相手の目にふれない隠れたものであっても、相手の利益のために尽くすことができる。
 倫理綱領にある「利用者の利益の最優先」という倫理基準は、この献身さをなくしては理解されない。
 献身さの反対は利己心である。あなたが支援を行うとき、その心は、献身さと利己心の間を、行ったり来たりする。
 相手に献身的であれば、それだけ心に喜びがあり、利己的であれば、それだけ心がむなしさで満ちるのである。  

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.21)

 【引用おわり】

 献身的な行為がなければ、利用者に対する支援も成立しない。
 利用者にとって、より良い行動ができるための適切な支援である。
 それも利用者が満足するような対応でなければならない。
 量と質が適切な支援である。

2019年9月9日月曜日

豊かな人間性が地盤

 専門の支援者を育てる話の9回目。
 有能な支援者の基盤には、「豊かな人間性」が大事だ。
 それについて、川村隆彦氏は次のように述べる。

 【引用はじめ】
 
 支援者としての専門教育は、豊かな人間性という地盤のうえに積み上げられるものである。
 人権意識、人を信頼することも、グループで仲間と協力することも、地域で人々とともに生きようとすることも、豊かな人間性のうえにこそ、積み上げることができる。

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.14)

 【引用おわり】

 「豊かな人間性」といわれると、抽象的でわかりづらい。
 でも、私たちは次のような一般的な言葉で表現している。
 「愛、思いやり、親切、優しさ、友情、勇気、情熱、責任感、正義感、正直、誠実、礼儀、信頼」(川村p.13)
 「豊かな人間性」って、肯定的で積極的、前向きな行動のことである。

2019年9月8日日曜日

有能な支援者

 専門の支援者を育てる話の8回目。
 有能な支援者とは、どういう人か。
 それについて、川村隆彦氏は次のように述べる。

 【引用はじめ】
 
 有能な支援者は、有能な教師でもある。
 教える力をもつ支援者が人々に与える影響は計り知れない。
 彼らは、自ら学ぶ力をもっている。

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.9)

 【引用おわり】

 有能な支援者を目指そう。
 学ぶ力、教える力を兼ね備えた人たちだ。
 そうした人たちは、利用者や施設の組織をも変える。

2019年9月7日土曜日

小さな実践の積み上げ

 若者を専門家に成長させるには、どうするか。
 そうした話の7回目。
 専門家にするには、将来をみすえて少しずつ成長するような助言が必要だ。
 それについて、川村隆彦氏は次のように述べる。

 【引用はじめ】
 
 現在の姿でなく、将来、成りえる自分が見えるとき、人はそれに近づきたいと願う。
 今はたとえささいな望みでも、あきらめずに、小さな実践を繰り返してほしい。
 それがさらに強い望みにつながり、人々を完成に導いていく。  

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.8)

 【引用おわり】
 
 小さな実践によって、より良い支援のあり方が身につく。
 絶え間ない地道な努力の繰り返し。
 それが成長を支える。

2019年9月6日金曜日

専門家は少しずつ成長する

 「働く意味を失った若者」に対してどのように支援するか。
 そして、どのように育てるか。
 そうした話の6回目。
 誰だって、すぐに専門家になれるわけでない。
 りっぱな支援者になるには、助言なり訓練がいる。
 将来をみすえた対応である。
 それについて、川村隆彦氏は次のように述べる。

 【引用はじめ】
 
 支援者を、現在の姿から、少しずつ完成に導くためには、まず、彼らの将来像を思い描く必要がある。
 「私は、将来、どのような支援者になれるのだろうか?」
 「彼は、将来、どのような専門家になれるのだろうか?」
 そして、思い描いた将来の姿に向けて、あなたの助言や訓練を与えてほしい。 

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.8)

 【引用おわり】

 川村氏は、現在の姿だけで判断しては誤るとも言っている。
 現在の不完全さに対して、不満を抱くことが多い。
 専門家は少しずつ成長するのだ。 

2019年9月5日木曜日

新たな意欲づけ

 「働く意味を失った若者」の話の5回目。
 施設の支援者たちは、毎日多忙で、働くことの意義など教えられなかったという人が大半。
 しかし、それに反する答えもある。
 次に引用する。

【引用はじめ】
 別の施設で同じような質問をすると、支援者の一人が「忙しくてあまり時間をとれないですが、いっしよに仕事をしている人びとに関心を示し、 できるだけ彼らと話し合っています」と答えた。
 「なぜそうするのですか?」と尋ねると、「私自身そうしてもらったからです」と、自分の経験を話してくれた。

 人を養うことは、1日わずかな時間があればできる。
 養うことができないほんとうの原因は、「大切さ」とその「方法」を知らないからである。
 人を養うことの「大切さ」と「方法」を知るとき、人々は変わっていく。  

  (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.7)

 【引用おわり】

 若者が挫折するのは、先輩たちにも責任がある。
 ちょっとの話し合いの機会によって、若者はヒントを得ることができる。
 新たな意欲につながる。
 それが人を育てることなのだ。

2019年9月4日水曜日

いっぱいいっぱい

 昨日から続けている「働く意味を失った若者」の話。
 4回目となる。
 この若者に対する先輩たちの対応が以下の引用だ。

  【引用はじめ】

 ある施設の支援者たちに「みなさんのもとで働く人々を専門的に養っていますか?」と聞いてみた。すると一人は、「忙しすぎて、構ってる暇がない」と答えた。
 別の人は、「どのようにすればいいのかわかりません。私自身、今まで専門的に養われたことがないんです」と答えた。
 (川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」p.7)

 【引用おわり】

 施設が多忙で教えるひまがない。さらに、今までも自分たちは教えてもらった経験がない。
 教えたり、教わったりする施設風土がない。
 多忙という理由で。
 自分たちのことで精いっぱい。常に、みんな「いっぱいいっぱい」なんだ。
 支援者の苦労が大変とつい同情してしまうのだが。

 さて、この話は次にもつづく。

2019年9月3日火曜日

働く意味を失った若者

 前日の本ブログは、「多忙感のみ残る仕事」がタイトル。
 川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則」からの記述である。
 障がい者サービス事業所で意欲的に働いていたのが、いつの間にか多忙さに埋没してしまっている話だ。
 そのつづきは、こうなっている。

 【引用はじめ】

 やがて毎日が同じ作業の繰り返しに思えてきた。
 がんばっても、がんばらなくても、何も変わらないように思えた。
 だれも彼に仕事の夢やビジョンを語ってくれなかった。
 人を支援することのすばらしさややりがいを、教えてくれる人はいなかった。
 この若者は、しだいに働く意味を見失っていった。 (p.7)

 【引用おわり】 

 毎日の繰り返しに意味を見いだせなくなっている若者。
 やりがいを見失ってしまった。
 この時、若者に対する支援が適切になされるどうか。
 仕事の意義を語り合える仲間がいないと。
 支援者の成長を支える視点である。

 この話は3回目。これからもこの話は、まだまだつづけます。

 

2019年9月2日月曜日

多忙感のみ残る仕事

 本日は9月2日、月曜日です。
 理事長の出勤は月曜日です。
 のぞみの家会議室で本ブログを書いているところです。
 昨日の「理事長の部屋」のつづきです。
 川村隆彦著「支援者が成長するための50の原則-あなたの心と力を築く物語-」の一節は、「人を助ける仕事をめざし、支援者としての一歩を踏みだした」という個所の引用だった。
 そのつづきは、こうである。

 【引用はじめ】

 最初、仕事は何もかも新鮮だった。利用者を体当たりで受け止めた。
 成功もあり、失敗もあった。
 しかし彼には、そのことを話し合い、適切なアドバイスをくれる人がいなかった。
 そして、忙しいだけの日々が過ぎていった。(p.7)

 【引用おわり】

 最初の新鮮な驚きや輝きが、時間とともに失われていく。
 利用者に対する情熱的ながんばりもいつの間にかなくなっていくのだ。
 なぜか。
 成功や失敗に対する仲間や先輩からの適切なアドバイスがない。
 多忙さに埋没してしまうのだ。
 あんなに意欲に燃えてやろうとしていたのに。
 いつの間にかなんとなくやらされている感じになっている。
 自らがんばっている感じがなくなっていく。
 多忙感のみが残る仕事となる。

 ということで、この支援者の話はまだまだつづく。


2019年9月1日日曜日

支援者向けの良書

 支援者向けの良書がある。
 川村隆彦著「支援者が成長するための50の法則―あなたの心と力を築く物語―」中央法規出版(2006年)、定価2600円(税別)
 川村氏は、神奈川県立保健福祉大学准教授で、日本ソーシャルワーカー協会倫理問題委員だ。
 ソーシャルワーク修士。
 ソーシャルワーク関係の著書も多い。
 私の手元にある上記の著書は、2014年第11刷のもの。初版は2006年だからロングセラーとなっている。
 この手の著書としては、売れ筋と言っていい。

 本書の帯には、「"決意を込めた実践力"を養うために!」とある。
 さらに、「福祉、保健、医療、教育など人々の支援にかかわるさまざまな専門職が実践するために深く理解し、身につけておかなければならない原則について、多くの身近な事例を通し具体的に考え学びます。」 
 数年前に、購入していたのだが、前半部をななめ読みした程度だった。

 序章に次のような記述がある。

 【引用はじめ】

 空を向いて、ぽつんと立っている「建てかけの家」を目にしたとき、一人の若者のことを思い出した。
 彼は中学のころから、人を助ける仕事につきたいと考えていた。
 自分が問題を抱えていたとき、他の人から助けてもらった経験があり、それがきっかけとなり、人を助ける仕事をめざすようになった。
 彼はその後、専門的な知識を学び、ボランティアで実践の楽しさも知った。
 やがて彼は施設に就職し、支援者として一歩を踏み出した。(p.6-p.7)

 【引用終わり】

  もちろん、施設就職してからのその後が書いてある。どうなったか。それは、次に続く。
 乞うご期待。
 今後、本書をだしに私なりの思いを伝えていきたい。
 お付き合い願いたい。
   

特定処遇改善加算

 福祉・介護職員に対する処遇改善加算が実施されることになっています。
 今回は、福祉・介護人材確保を一層進めるためのものです。
 特に、経験・技能のある職員に重点化を図るものです。
 福祉・介護サービス事業所で勤続年数10年以上の資格のある職員に対する処遇改善です。
 これが、2019年度において、福祉・介護職員等特定処遇改善加算の創設です。
 資格とは、介護福祉士、社会福祉士、保育士、精神保健福祉士などが入ります。
 特定加算によって、多少の処遇改善がなされることは職員にとって朗報です。
 仕事に対する励みになることを期待しています。