2021年6月30日水曜日

人は職場環境に適応する

 「自律型」職場環境であるかないかで、職員の仕事ぶりも変わる。

 そのことについて、榎本氏、次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第3回目である。

【引用はじめ】

 人の性格や人間性は、社会人になるまでの家庭環境や学校環境などにより、ある程度形成されてはいます。しかし社会人になってからの職場環境に、人はかなりの時間、身をおくことになります。

 その職場が、「自律型」であることが適している職場であれば、自然と人は適応していくようになります。逆も然りです。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) はじめに

【引用終わり】

 職場においては「自律型職員」が求められている。多くの管理職は即戦力となる「自律型職員」を採用したい。しかし、始めからそうした職員が採用できるわけでない。そもそも採用する側の職場環境がそうした自律的なものになっているかどうか。結局は、職場環境によって職員のあり方が変わることも考慮しなければならない。 

2021年6月29日火曜日

「自律型社員」は後から育成できる

 「自律型社員」というのが求められている。しかし、そうした人は滅多にいない。入社した人を社内において育てる必要がある。

 そのことについて、榎本氏、次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第2回目である。

【引用はじめ】

 1. 自律型社員は育成できるもの

 2. 「意識」や「やる気」を変えるのではなく、「行動」を変える

 「自律型社員」はもともと生まれつきのものであって、会社に入ってから育成するものではない、となんとなく思っている方が多い。しかし、そのようなことは決してありません。どんな人間でも、後から替えること、変わることは可能です。

 逆にいえば、どんなに「自律型」であった人でも、後からダメになってしまうこともあります。大部分は職場の環境次第なのです。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) はじめに

【引用終わり】

 わが福祉施設においても、いい人材を求めているのは当然である。始めから自律的に仕事ができるなど期待しても無理と考えるべきである。

 施設内において、仕事をしながら効率的に自律型職員になるよう育成できるようにしなければならない。そうした職場づくりが大事だ。まずは前向きに仕事に取り組む職員である。利用者に対するていねいで、きめ細かな支援ができなければならない。 

2021年6月28日月曜日

誰もが自律型社員を探している

 また、新しい本から人材育成の方法を学ぶことにする。次の書物だ。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版

 榎本氏は社会労務士として中小企業のマネジメントに多くの実績がある。本書を少しずつ引用しながら、人材育成のあり方を学んでいくことにする。また、長くなる可能性があるので、お付き合い願いたい。

 職員一人ひとりを生かし、利用者支援が適切なものになるようにするためである。当法人の信頼を高め、ゆるぎない法人経営ができるようにするためでもある。

 どこの企業でも「自律型社員」を求めていると、次で述べている。

【引用はじめ】

 「自律型の社員に来てほしいんだ。どこかにそんないい人はいないかね」

 このような相談を受けます。

 「社長、大手で上場している会社でも、そんな社員を喉から手が出るほどほしい、と言っていますよ。でも、大手でもなかなか採用できない。もし、いたとしても、中小には来てくれるか」

 「でも、社長、それなりのフツーの社員を、自社で育てることはできます。自社で自律型社員に育成するのです。

 すると、社長さんはこう言います。「そりゃぜひ知りたいよ。〖意識を変える〗とか、〖やる気を引き出す〗とか、そういう研修みたいなものをやってくれるかい?」

 「いえ、社長、違います。私が行うのは〖ABA〗という行動科学を用いて、『行動』に直接アプローチをする人材育成法です。」

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版

【引用終わり】

 「自律型社員」なんて待っていても来てくれない。それならば、そうした人を育てられないか。職員の「意識を変える」なんて言っても簡単には変わらない。一時的に変わっても長続きしない。「やる気を引き出す」なんて言ってもどうすれば良いかわからない。こうした常識的なやり方を試みても今までうまくいった試しがない。常識破りの方法がある。それをやってみようというのがここでの提案である。ABAと呼ばれる「応用行動分析学」によるアプローチである。だまされたと思って試してみよう。 

2021年6月27日日曜日

分かっちゃいるけど、できない

 舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)を「159回」にわたって紹介してきた。

 「やる気」を引き出す技術の一端を理解してもらうことがてきたと期待しているのだが。

 ただ、ここに紹介した内容を文字面で分かっても、実践的に応用できるかとなると別問題。そこには大きなハードルがある。言語理解とそれを行動実践として置き換えられるかという問題がある。「分かっちゃいるけど、できないしやれない」ということが往々にして起きる。

 そのためには、今自分にとって課題となっていることを明らかにする。それも、行動のレベルとなる標的行動にしなければならない。この標的行動を強化するのか、消去するのか、弱化するのか。そうしたら、行動の直後にどのような好子を随伴するか、嫌子を随伴するかを決めるのである。

 標的行動は増やすのか、減らすのか。それを数値化することによって明らかにするのだ。ぜひ今の自分にとって課題となっていることを、このようなやり方でやってみてほしい。うまくいったら自分自身を褒める。うまくいかなかったら諦めずどこに問題があったか振り返って、次の手立てを試みるのである。

 さて、興味を持たれた人は、本書に直接あたって欲しい。きっと実践書として役立つはずである。

 

2021年6月26日土曜日

問題を行動レベルで測定する努力

 行動の原因を探る上で大事なことは、測定できるようにすることである。いかに定性的なものを定量化できるかである。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第159回目である。

【引用はじめ】

 原因の分析で大事なことは次のことである。

 対象となる問題を行動のレベルに落とし込み、客観的に定義されたその行動を実際に測定し、行動の原理に基づいて介入を実施することである。

 「覇気」「閉塞感」「リーダーシップ」というものは、ともする語られがちの問題だ。しかし、行動分析学の要諦は、それらを「評価」するのではなく、「測定」するところにある。解決したい問題を測定できる形でいかに行動として再定義するか、そこに介入の成功がかかっている。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.205~p.206

【引用終わり】

 応用行動分析学は「評価」でなく「測定」を重視する。行動直後の回数や頻度を明らかにして、行動変容の状況把握に努める。行動が強化されたのか、消去されたのか、弱化されたのかを明らかにするのだ。行動が増えたか、変わらないか、減ったのかをみる。グラフなどによって傾きがどうなっているかで表示されることになる。それで行動への手続きがうまくいっているかどうかを知ることになる。 

2021年6月25日金曜日

人は、変われる

  「人は、変われる」。その原理を学んできた。本ブログだけでは舌足らずの部分も多かったはず。なかなかわかりにくかったかもしれない。利用者との支援の中で試してほしい。また、自らの問題をこうした原理によって変えられたらうれしい。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第158回目である。

【引用はじめ】

 人はなぜ、ある行動をするのか。あるいは、しないのか。

 建て前や理屈では、してはいけないと知っていることでも、人はやってしまうことがあります。逆に、すべきと分かっていることでも、どうしてもしないことがあります。

 その理由が分かれば、人は変われるはずです。自分を変えることも、誰かを変えてあげることもできるはずです。

 「人は、変われる」。それが、行動分析学の根底にある哲学です。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.3

【引用終わり】

 「人は、変われる」は行動の直後に、強化・消去・弱化を随伴することによって成り立つという原理だ。しかし、そのタイミングが難しい。そして、何を変えるか明確でなければならない。標的行動がはっきりしてないとうまくいかない。また、「塵も積もれば山となる」「天災は忘れた頃にやってくる」などといったものについても、計画的な随伴性が必要だ。そうした課題はあったとしても、まずは目前にある問題についてまずは焦点化して、ステップバイステップで変えていく試みをすることで、コツを身につけることである。 

2021年6月24日木曜日

組織は人と人との相互作用で成り立つ

  組織は一人ひとりの関係が複雑に絡み合っている。互いに強化や消去や弱化し合っている。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第157回目である。

【引用はじめ】

 組織は、人と人との相互作用によって成り立っています。

 こちらが相手の行動を強化すると、その結果が自分の行動を強化してくれることもよくあります。

 また、相手が適切な行動してくれないせいで、自分も良い行動ができないのだと思える場面もあるでしょう。

 でも、その場面を分析してみると、もしかしたら相手が適切な行動をしていないのは、自分(あなた自身)が相手の行動を消去したり弱化したりしているためかもしれません。

 組織を良くするのは、誰の責任でもない、私たち一人ひとりの責任だと言えるのではないでしょうか。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.203

【引用終わり】

 組織はそれぞれの関係によって、良くも悪くもなる。良い組織づくりには、互いが強化し合う関係が求められる。課長は部長の発言の一部でも賛同できる内容があったら、笑顔で頷く。すなわち、部長の発言を肯定するのである。そうすれば、部長も喜びを隠せなくなる。部長はそういうことが重なれば、課長に対して好意的な態度で接するようになるだろう。人と人の互いの関係が組織を良くも悪くもするのである。

2021年6月23日水曜日

強化の好循環生み出す方法

 課長が部長に反目している状況を変えたい。その場合、部長の発言が少しでも課長に近かったらそれに大きく頷き、認めるようにしたい。全てが反対ということはないはず。一部でも認めることから始めると問題は解決しやすい。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第156回目である。

【引用はじめ】

 強化の好循環が生まれるとどうなるか。

 課長が部長を変え、その変化が課長を変えるのです。この循環さえできてしまえば、納得できない点に反対や批判をするという課長の行動は、納得できる点に同意し賛成するという行動にとって代わられるでしょう。代替行動の強化が成立するのです。

 これを続けてゆくと、部長は課長に対して親近感と敬意を覚えるようになります。

 自分の言うことを認めてくれるのですから、当然です。そうなると部長は、自分自身で確信が持てないことについて、今度は課長に意見を求めるようになるかもしれません。

 そのときには、課長は部長に対して笑顔と適切な意見とで強化するのです。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.201~p.202

【引用終わり】

 部長と課長の関係をより良いものにするには互いの歩み寄りが大事になる。そのきっかけから少しずつ関係が良い方向に変わっていくようにするのだ。もちろん、簡単ではない。互いの努力ということになる。しかし、その努力はイヤであっても少しの努力を継続すればなんとかなる。相手の良さというのは必ずあるからだ。そこに着目して良い関係を築いたいくのだ。 

2021年6月22日火曜日

強化の好循環

  部長の発言に対して、課長は賛同する部分に対して大きく頷く。部長はその発言に自信を持つことができる。課長は部長との考えに近い内容を理解できる。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第155回目である。

【引用はじめ】

部長にしてみれば、自分がある話をしたときに、人がそれに頷いてくれたり賛成してくれたりすれば、その話に自信を持つことができますから、その方向に進もうとするでしょう。

それは決して騙されているのでも洗脳されているのでもありません。もともと自分が考えたことに、自信を持つことができたというだけのことです。

課長にしてみれば、これを続けてゆくことで、部長が自分の考えと合う言動をとるようになることが期待できます。それが、部長に賛同するという行動を強化し続けることになります。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.200~p.201

【引用終わり】

 部長と課長が考え方の近い部分で折り合いをつける。それには、部長の発言が課長にとって賛同できればそれを肯定するのである。全てが賛成でなくても、その一部に考えが一緒のものがあれば、それに合わせるのである。これはお世辞ではない。互いが歩み寄る手立てなのである。 

2021年6月21日月曜日

納得できる内容に大きく頷く

  課長が部長の発言に対して、反対ばっかりではいい関係が築けない。やはり、部長の発言の中で納得できることについては、頷くことも必要だ。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第154回目である。

【引用はじめ】

部長の発言に反対や批判ばかりする課長についてどうするか。

まずは、課長が部長の話を聞いていて、納得できる点や同意できる点を見つけたら部長を褒めるようにしてみたらどうだろう。

今までの合点がゆかないところや不服な言葉に向かっていた注意力を、これからは逆のことに向けさせるのです。

そして、納得できる点には大きく頷き、同意できる点にははっきりと賛成することで、部長が課長の考えに沿ったことを言うよう強化してゆくのです。

部長にしてみれば、自分がある話をしたときに、人がそれに頷いてくれたり賛成してくれたりすれば、その話に自信を持つことができますから、その方向に進もうとするでしょう。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.200

【引用終わり】

 課長は部長の発言を全面的に反対ばかりしていた。しかし、発言の中には肯定でき納得できる内容もあるはず。そのことについては分かったと態度で示すようにすることである。納得できないことばかりに注意がいっていたきらいがある。少しでも肯定できる内容に注目するようにするのだ。

2021年6月20日日曜日

課長が部長の発言に反対ばかりする

 部長の発言に反対ばかりする課長はなぜそのようなことをするのか。結局は、反対する発言が強化されているからだ。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第153回目である。

【引用はじめ】

部長の発言に反対や批判ばかりする課長についてどうするか。

今まで課長は部長の話を聞いていると、納得しかねる点が気になって仕方がなくなり、反対や批判をすることでそのフラストレーションを解消していました。

また、部長の話の欠点を指摘することで、自分の能力を確認する喜びを得ていました。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.200

【引用終わり】

 課長は、部長の発言が納得できない。課長の発言は部長の問題を指摘することにもなる。課長の優位性が明らかになったりする。しかし、こうしたことは組織上問題である。なんとかしなければならない。課長の態度が増長したりすることは、組織に悪影響が生ずる。課長の態度ももっと柔軟に変える必要がある。

2021年6月19日土曜日

MUさんとの突然のお別れ

 のぞみの家の利用者、MUさんが6月17日に亡くなった。

 心よりご冥福をお祈りいたします。安らかにお眠りください。

 14日、月曜日にお会いした時は、何も変わった様子はなかった。トイレに行くために作業着をはずしているところだった。そのときは、声もかけることなくちょっと会釈する程度だったが。

 それにしても、急な別れとなってしまった。ご家族もやりきれない気持ちだろう。このコロナ禍で多くの人とのお別れもままならない。

上司による適切な助言

 部下が壁に突き当たったときには、適切な助言をすることができていなければなりません。なかなかうまくいかない上司もいます。部下との関係の中で、弱化や消去がなされている可能性があります。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第152回目である。

【引用はじめ】

部下が壁に突き当たったときに助言するという行動を強化しましょう。

まずは、部下の状況を把握することです。そうすれば、適切なアドバイスする機会も出てきます。

通常であれば、部下に適切な助言ができれば、部下が感謝してくれます。それが上司にとっては嬉しく、行動の強化につながります。

ただ、もしも部下の側が、助言を受けても感謝しない人たちだったら問題です。助言する課長の行動が消去されてしまうからです。ですから、褒められたら素直に喜ぶということも強化されるようにしなければなりません。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.199

【引用終わり】

 課長さんは部下の状況把握に努める必要がある。そうでなければ、壁に突き当たっているかどうかもわからない。部下が困っている時に適時適切な助言をすれば、部下からは感謝される。部下もどうすればいいか分からず困っている時に、その問題をうまく解決できた時の経験は大きい。助言してくれた課長さんに素直に感謝することになる。 

2021年6月18日金曜日

組織の状況把握に努めるようにするには

 上司とはいえ、課内の様子についてあまり興味がない課長さんもいる。それでは、組織を良い方向に進められない。課長さんは部下から仕事の進捗状況を聞こうともせず、ただ任せ放し。部下も課長さんに対しては、大した信頼も寄せる様子もなくなってしまう。それをどう変えるか。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第151回目である。

【引用はじめ】

組織の状況にあまり興味のない課長に対して、どうすればそうした行動を変えることができるか。

たとえば、部長がこの課長に、頻繁に課の状況を尋ねるのです。「今、君の課の仕事は、どうなっている?」というふうにです。

すると、普段から部下に状況を尋ね、課全体として仕事がうまくいっているのか、いっていないのかを把握していなければ、部長の突然の質問に的確に答えることができません。

つまり、自組織の状況が「分かりたい、分からないとまずい」と思うような工夫をするということです。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.198

【引用終わり】

 上司は常に社内の状況把握に努めることが責務である。それは、部下からの現状を聞き取る必要があるのだ。それを重視しない上司がいたりすれば最悪である。上司の部長さんが課長さんに対して、課内の状況報告を義務付けるのである。そうなれば、課長さんも部下から課内の状況を聞かざるを得なくなる。 

2021年6月17日木曜日

自分の組織の動きに敏感な上司

 上司は組織内の状況をよく知るべきと思っているかどうか。組織状況の把握に努力する上司は、その努力が強化されるためである。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第150回目である。

【引用はじめ】

世の中には、何か特別な強化を受けなくても部下の仕事をきちんと把握している管理者はいます。ですが彼らも、何の強化もなければ行動を維持することはできないはずです。それでは彼らは、何によって、部下の仕事を把握する(より具体的には、部下に仕事の状況を尋ねる)という行動が強化されているのでしょうか。

部下には仕事の状況を尋ねれば、自分の組織が円滑に動いているかどうかが、「分からない」から「分かる」へと変化します。この変化が心地よいために、管理者は部下の仕事を把握しようとします。ですが、この課長は今まで、そうしたことをしなくても平気でした。

つまり、自組織の状況が分かることは、もしかするとこの彼には何の意味もないかもしれません。分かったところで、「だから何なの?」という感じかもしれません。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.197~p.198

【引用終わり】

 上司が部下の話をよく聞こうとするのは、組織の状況や様子を知ることが重要と思っているからだ。組織の動きが円滑かどうかしっかり把握することで、問題を早期に発見できることを知っているからだ。部下の話を聞けば、組織の動きが分かることが強化されるのである。 

2021年6月16日水曜日

部下に対する支援をどうするか

 課長が部下の仕事をあまり注目してない。そうした部下からの不満がある。課長の信頼を低めている原因でもある。もっと、部下の信頼を勝ちえるにはどうするか。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第149回目である。

【引用はじめ】

課長に仕事を手伝ってもらいたいと考えている部下と、部下のために仕事を任せているという課長との間に認識の違いがあった。

さらに、任せることがいわゆる「丸投げ」になっている実態もあったため、行動的には以下の3点を強化することが課題となりました。

  • 部下のために任せているのだ、という意図を伝える
  • 任せた後に、適宜状況を把握する
  • 部下が壁に突き当たったときに助言をする

 まず、意図を伝えるというのは一回やれば済むことですので、課長にそのように指示して、伝えるという行動を引き出せばよいでしょう。

 次に、任せた後に頻繁に状況を把握する、という行動を強化します。

 これも今までやってこなかったことなので、初めは指示が必要です。つまり、課長に対してたとえば「毎日、部下とミーティングして、仕事の状況を把握してください」と言いましょう。そして、彼が実際に状況把握のミーティングをしたら、強化するのです。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.196~p.197

【引用終わり】

 課長は部下の仕事ぶりを時おり確認し、それなりのアドバイスをするのがいい。部下の仕事の状況は把握しているのですよと、分かるようにすることだ。部下に対して、仕事を「丸投げ」しているわけでなく、部下に仕事を任せているのは、信頼の証ということをアピールするのだ。 

2021年6月15日火曜日

課長を変えるために部下を変える

 部下が褒められても、そのことを喜ばなかったり、皮肉を言うなどがあれば、褒めることは消去や弱化されたりする。だから、部下も素直に喜ぶって大事。部下の態度も直す必要がある。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第148回目である。

【引用はじめ】

せっかく課長が褒めたのに、部下が喜ばなかったとします。そのときには、部長からその部下に、「褒められたら素直に喜ぶものだ」などと注意していただくのです。これを繰り返すと、部下の喜ぶ行動が強化されます。なぜなら、素直に喜べば注意されずに済む(=不快から逃れられる)からです。

また、課長から褒められた部下が、課長に皮肉を言ったとします。そのときには、「せっかく褒めてもらいながら、そんなことを言うものではない」と部下を叱っていただくのです。これは、皮肉を言うという行動を弱化することになります。

こうしてゆけば、部下は褒められたときには皮肉など言わず素直に喜ぶようになります。そうなればしめたものです。部下の喜ぶ顔は、課長にとって心地よいものでしょうから、部長が課長を直接褒めなくても、課長は褒めるという行動を自然と維持できるようになるでしょう。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.195~p.196

【引用終わり】

 上司と部下の関係がぎくしゃくしていると、うまくいかない。上司が部下を褒めても、それが素直に受け取られず皮肉として返ってきたりする。そうなると、上司も部下を褒めることをしなくなる。お互いの信頼関係を保つ必要がある。素直な関係の修復には、第三者の仲介が大事。上司の上司がアドバイスすることだって必要となる。 

2021年6月14日月曜日

部下を褒めるべきだと思っていない課長にどうかかわるか

 部下を褒めようとしない上司がいる。その理由はなぜか。そもそも褒める必要などないとの思いがあったりする。そうなると、こうした態度をどのように改めたらいいか。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第147回目である。

【引用はじめ】

課長が部下を褒めないのはなぜか。たとえば、次のようなことがあるからです。

  • 部下を褒めるべきだと思っていない
  • 褒めても部下が嬉しそうな顔をしない
  • 褒めると逆に部下からは皮肉を言われる

 部下を褒めるべきでないと思っている場合どうすればいいか。部長から課長に対して、部下を褒める必要があることを言ってもらう。そして、課長が部下を褒めたら部長が課長を褒めるのです。

 部長が課長に対して、「部下は褒めて育てないといけない」と言っていただくのです。そして、課長が実際に部下を褒めたら、すかさず強化するのです。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.194

【引用終わり】

 部下に対して褒めて育てることが大事ということを理解してもらう必要がある。褒めない課長に対しては、部長が課長に部下を褒めることの重要性を諭すことである。そして、実際、課長が部下を褒めたら、部長は課長を褒め強化することである。 

2021年6月13日日曜日

決断に思い悩む組織の長

 決断することから逃れようとする。決断することを弱化される随伴性があるからだ。決断を誤れば大きな損失をもたらす。その責任を問われることになる。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第146回目である。

【引用はじめ】

決断したことにより発生する責任はあります。それは、人の上に立つ者として逃れられないものだと思われます。ですから、それによる行動の弱化はありつつも、もう片方で効果的な強化を行うことで、最終的には彼は決断を下すようになるでしょう。

それは苦しみながら決断を下すということに他なりません。ですが、古今東西すべてのリーダーは、そうした苦しみを全員が味わっていることを知りましょう。

決断することで、何かとんでもない結果が起きてしまうかもしれない。しかし、今決めなければ、組織はもっと悪いことになってしまうかもしれない。

天秤の両側に「決断すべき」「決断しないべき」という巨大な重しが乗っかって、両方の重みに折れそうになりながら、つぶれそうになりながら、耐えて進む。それが組織の長の姿なのです。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.193~p.194

【引用終わり】

 上司にとって決断することの責務は大きい。決断しないことによる損失の方がもっと大きいことを知るべきである。決断することの重要性は強調されなければならない。決断を誤ることもある。それでも決断しなければならないことはある。上司である限り誤ったらそれなりの責任をとる覚悟は必要だ。 

2021年6月11日金曜日

決断せず無為無策のままでは状況が悪くなる

 決断しない上司は上司とは言えない。でも、決断することで責任を取らなければならないとなると決断できない。それでは、会社に不利益となることを知るべきなのだが。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第145回目である。

【引用はじめ】

課長が決断しないことをなんとかしたい。課長は、決断することにより発生する責任が嫌で、決断することを避けています。彼にとって、責任の重さは行動を左右する一大要因である。

ならば、それを逆手に使ってみる。今は責任の重さで弱化されている行動を、今度は責任の重さで強化するのです。

強化をするには、行動の後に、

  • 心地よさを感じる
  • 苦しみから逃れられる

ことが必要です。ならば、彼にとって大きな負担である責任が、決断することにより軽減されるというルールをつくれば、彼にとっては効果的な強化となるはずです。

たとえば、「何も決断せず無為無策のまま状況が悪くなってしまったら、それが会社にとっては最悪のことであり、そのときは、決断しなかった管理者に全責任をとってもらう」というルールを組織内に徹底するのです。そうすれば、この課長は何らかの決断を下すことで、無為無策による重大責任からは逃れられます。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.192~p.193

【引用終わり】

 課長という地位についた限り、決断は不可欠である。そのための課長である。決断もしないで無為無策のまま放置すれば会社を危機に陥れることにもなりかねない。決断しないことの責任の方が重い。決断することが強化される随伴性が必要なのだ。 

2021年6月10日木曜日

低い目標を立てると損する

 社員に対して、高い努力目標を奨励する職場で、低い目標に甘んじている人がいたらどのように評価されるだろうか。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第144回目である。

【引用はじめ】

高い目標という努力目標を立てる社員が多い職場で、低い目標を立てたら、どうなるでしょう。

最初に軽蔑されるだけでなく、万が一にもその低い目標が達成できなかったら、上司を含む周囲から冷ややかな目で見られることは想像に難くありません。この不安感が、低い目標を立てることを弱化します。

また、無難に目標達成したとしても、ことさらに褒められることはないでしょうから、目標達成したら良いことがあるだろうという期待も持てません。これは低い目標を立てることを消去することになります。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.190~p.191

【引用終わり】

 低い目標に対して、周りからは評価されず、褒められることもない。そうした職場雰囲気が必要である。高い目標を目指して努力する社員が認められる職場になって欲しいものだ。 

2021年6月8日火曜日

チャレンジ目標を立てることの意義

 目標管理制度の中では、目標達成することが第一義的なものとなるので、目標設定が低くなりがちだ。仕事に対する熱意不足が目立つ職場になりかねない。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第143回目である。

【引用はじめ】

一人ひとりに自分にとってのチャレンジ目標を立てさせれば、このときの目標は「できる、できない」ではなく「やりたい」という熱意を示したものとなります。

それなら、高い目標を掲げた人は周囲から褒められ尊敬され、逆に目標の低い人は下に見られるようになるでしょう。つまり高い目標を立てることが強化され、低い目標を立てることが弱化されるわけです。

しかも、全員の評価基準は同じ中で、さらに高い目標にチャレンジすることを表明した人は、結果的にその目標を達成したら、上司を含む周囲からものすごく賞賛されるだろうと期待できます。

この期待感が高い目標を立てるという行動をさらに強化します。そして、もし目標が達成できなかったとしても、「ナイストライ」と言ってもらえるかもしれません。

この安心感が、高い目標を立てることを一層強化するのです。高い目標を立てることは、得することはあっても損することはないのです。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.191

【引用終わり】

 仕事に対するチャレンジ精神を高めたい。それには、職員一人ひとりが高い目標に向かうチャレンジ精神を醸成する必要がある。職員が「やりたい」精神を発揮することで、強化される職場が求められる。高い目標を掲げてがんばる職員を育てる必要がある。

 

2021年6月4日金曜日

目標を低く抑えるという行動を変えるには

 職員の中には目標を低く抑えて、自らの目標達成率を高くしようとするものもいる。目標を低く抑えれば、確実に目標が達成できるからである。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第143回目である。

【引用はじめ】

目標を低く抑えるという行動を変えるにはどうするか。

部下が目標を低く抑えるのは、そうすれば実際の達成率が高く出て、会社から評価されやすくなるからです。

また目標が未達成に終わるおそれが少なくなり、それによって責められるおそれも減るからです。これは標準的な目標管理制度を敷いている職場では誰にでも起こり得ることで、彼だけの問題とは言えません。

こうした基準でなく、目標はあくまで自分にとっての努力目標にするのです。そうすれば、評価を気にして目標を下げる必要はなくなります。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.190

【引用終わり】

 目標を低く抑えるというのは、会社の目標管理制度の弊害ともいえる。目標が未達成になると職員にはペナルティが課されるからである。これでは、目標が達成しやすいように低い目標になってしまう。

 そうじゃなくて、自らの努力目標によって頑張るようにさせた方がいい。

2021年6月1日火曜日

上司は「結果が良くても悪くても責任は自分にある」と明言

  悲観的な発言ばかりする職員がいる。そのような職員が楽観的な発言をするように変えるにはどうするか。楽観的な発言が強化される状況をつくることである。

 そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第142回目である。

【引用はじめ】

悲観的な発言が多い職員に対し、上司は、あらかじめ「結果が良くても悪くても責任は自分にある」と明言したらどうでしょう。

たとえば新製品発売の会議があったら、冒頭にそういう話をするのです。そうすれば、悲観的な発言は責任が問われなくなりますから、今まで彼を悲観的発言に駆り立てていた要素がなくなります。

それなら彼も楽観的な話がしやすくなります。そして、実際に楽観的な発言をしたら、笑顔や賛同で強化するのです。

逆に、上司が「責任は自分がとるから」と言っているにもかかわらず、彼がまだ悲観的なことを言うようであれば、そのときは弱化すべきです。それは誰が見ても正しい行為と言えるはずです。

舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.189

【引用終わり】

 新製品発売会議の席上、悲観的な発言ばかりでは士気にも影響する。積極的に新製品の販売が促進することが求められる。上司が結果には責任をとることを明確に示し、社員からの販売促進に関する積極的発言を引き出すことが大事である。