2020年2月29日土曜日

言葉を借りずに教える方法

 教示・モデリング・身体的誘導の三つは、言葉を介しての「教える」方法だ。
 言葉なしで、「教える」方法がある。
 それについて、舞田氏は、「言葉を借りずに教える方法」として、次のように述べる。 
 舞田氏による著書の紹介は第73回目である。


 
【引用はじめ】  

 教示・モデリング・身体的誘導の三つは典型的な教える方法に対して、シェイピングやチェイニングは、「教える」という感覚を超えて人を導く方法ともいえる。

 覚える道筋を合理的に整え、学び手が自発した行動を、褒め言葉や激励を好子につかって上手に強化し、教えられている自覚なしに、新しいスキルを習得させる。
 実は、教示、モデリング、身体的誘導によって学ぶことができるのは、言葉を持った人間だけである。
 逆にいえば、シェイピングとチェイニングは、言葉の力を借りずに教えることができる方法だ。


(舞田竜宣 + 杉山尚子著「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」 p.176~p.1772008年、日本経済新聞出版社刊)  
 
 【引用おわり】

 シェイピングとチェイニングは、言葉を介することなく、新しい行動を習得する方法である。
 最終的な標的行動まで、いくつもの階層的な、あるいは継次的な行動が自発できるようにする。
 そこでは、褒めるなどの好子による強化手続きを行うのである。そのことから、教えられているという感覚なしで行動を習得できることになる。

2020年2月28日金曜日

教える三つの方法

 新しい行動を習得するには、五つの方法がある。   
 その中の三つについて、舞田氏は、「教える三つの方法」として、次のように述べる。 
 舞田氏による著書の紹介は第72回目である。


 
【引用はじめ】


 新しい行動を習得するための方法として、行動分析学では、次の五つが考案されてきた。
  1. 教示
  2. モデリング
  3. 身体的誘導
  4. シェイピング
  5. チェイニング
 教示とは、言葉で教えることであり、言葉には話し言葉と書き言葉がある。口頭で説明を受けたり、マニュアルや取扱説明書のように文字で書かれた情報を頼りに、新しいやり方を学ぶことができる。
 モデリングとは、モデルを示す、お手本を示すことである。すでにその技能を持っている人が、実際にやってみせて、見て学ぶわけだ。
 身体誘導とは、手取り足取り教えることだ。ゴルフやテニスのコーチは、初心者に対して、口で説明し、お手本を見せるだけでなく、フォームがおかしければ、手を添えて、正しいフォームを体験させる。これが身体誘導だ。
 以上の三つは「教える」方法だ。 

 (舞田竜宣 + 杉山尚子著「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」 p.176~p.1772008年、日本経済新聞出版社刊)  

 
 【引用おわり】

 私たちは、教示、モデリング、身体誘導に関して「教える手立て」として、無意識に使っている。
 教えるには、有効な手法である。
 それを意識的・計画的に行うのが応用行動分析学なのだ。

2020年2月27日木曜日

新しい行動を身につける手法

 新しい行動を習得するには、どんな方法を用いればよいか。それを明確にしているのが応用行動分析学である。  
 
 そのことに関して、舞田氏は、「新しい行動を身につける手法」として、次のように述べる。 
 舞田氏による著書の紹介は第71回目である。

 
【引用はじめ】


 課題分析、シェイピング、チェイニングの三つは、新しい行動を習得するための手法である。
 新しい行動を習得するための方法として、行動分析学では、次の五つが考案されてきた。
  1. 教示
  2. モデリング
  3. 身体的誘導
  4. シェイピング
  5. チェイニング

 (舞田竜宣 + 杉山尚子著「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」 p.1762008年、日本経済新聞出版社刊)  

 
 【引用おわり】

 新しい行動を習得する方法を五つ体系化しているのが、応用行動分析学である。
 障がい者支援にとっては極めて有効な方法である。最近は、多くの実践において証明されている。


2020年2月26日水曜日

チーム経営

 成果主義が強調されすぎると、個人プレイを重視するようになって、チームプレイがないがしろにされる傾向がある。  
 
 そのことに関して、舞田氏は、「チーム経営」の仕組み化することが重要として、次のように述べる。 
 舞田氏による著書の紹介は第70回目である。

 
【引用はじめ】


 世界の先進企業では、「チーム」ごとに共通の目標与え、チーム全体を一つの単位として評価し、チームの中で自由に山分けしてよい報酬を与える「チーム経営」が行われている。
 その前提として、まずは個人の役割責任が明確に定義され意識されている。個人としての評価はしっかりと仕組み化したうえで、さらにチームのパフォーマンスも仕組みとして見る。 

 (舞田竜宣 + 杉山尚子著「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」 p.1752008年、日本経済新聞出版社刊)  
 
 【引用おわり】

 野球でも個人プレイだけの打率やホームランの記録が良くてもチームの勝利につながらなければ、あまり評価されない。
 チームの勝利につながるヒット、ホームラン、盗塁などが大事である。犠牲フライによって、逆転勝利につなげるといったチームプレイである。
 チームの勝利があってこその個人記録だ。

2020年2月25日火曜日

成果主義の良い点と問題点

 現在、企業等においては、成果主義が強調されて、それを人事の評価対象するようになってきている。

 ただ、そのことについて、舞田氏は、「成果主義の良い点と問題点」として、次のように述べる。 
 舞田氏による著書の紹介は第69回目である。

 
【引用はじめ】


 成果主義の人事改革は、それまでの日本の組織にありがちな、責任の所在が曖昧であるという「甘えの構造」にメスを入れた。そして各人の役割と責任を明確にし、コミットメントを引き出すことには成功した。
 しかし、その反作用として、各人が自分の役割と責任だけに没頭し、周囲への協力や後輩の育成に無関心になるという、悪しき個人主義をも同時に生み出す結果となっている。  
 

 (舞田竜宣 + 杉山尚子著「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」 p.1752008年、日本経済新聞出版社刊)  
 
 【引用おわり】

 成果主義における責任と役割を明確にすることは大変重要である。それが、個人だけが良いとするようならばチームワークに問題が生じかねない。
 それぞれの協力や関係を大事にすることが前提の成果主義でなけばならない。それが組織力の向上につながる。より良いチームワークがあって、個人も伸び、組織も伸びる。

2020年2月24日月曜日

ゴルフを好きにする

 バックワード・チェイニングが効果を発揮する例は、ゴルフかもしれない。

 そのことを、舞田氏は、「ゴルフを好きにする」として、次のように述べる。 
 舞田氏による著書の紹介は第68回目である。

 
【引用はじめ】


 バックワード・チェイニングの効果を一番実感できるものの一つは、ゴルフではないか。
 ゴルフは通常、ティーショットから始まって、途中のフェアウェイやラフ、バンカーを経て、最後はグリーン上のパットで終わる。しかし、完全な初心者が打つと、ボールは第一だからとんでもないところに飛んでいく。そして、山を登り谷を下り、グリーンにたどりつくまでに10打も20打もしてしまうと、18ホールを終了する頃には、もうゴルフが嫌になってしまう。
 だが、一緒に回るパートナーが最初のほうを打ってあげ、当人は一番ホールではパットだけ、二番ホールではグリーン周りから、という具合にバックワード・チェイニングをしていってあげたら、少なくとも「二度とゴルフなんかやるものか」とは思わないに違いない。  
 

 (舞田竜宣 + 杉山尚子著「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」 p.173~p.1742008年、日本経済新聞出版社刊)  
 
 【引用おわり】

 ゴルフの上達法として、バックワード・チェイニングを応用した例が実際ある。
 "Total golf"(1981年)という二人の著者による本も出版されている。このことを、舞田氏も上記の著書で記している。
 初心者や子供がゴルフに興味を持つためには、興味ある手法に違いない。
 

2020年2月23日日曜日

できる範囲を逆順に広げていく

 バックワード・チェイニングは、使い方次第では大きな効果を果たす。

 そのことを、舞田氏は、「できる範囲を逆順に広げていく」として、次のように述べる。 
 舞田氏による著書の紹介は第67回目である。

 
【引用はじめ】


 バックワード・チェイニングは、常に最後までやり抜いた喜びをもって終わる。
 まずは最終ステップができるようにし、それができたら今度はその一歩手前のステップから始めて最終ステップまでいき、それができるようなったら、今度は二歩手前のステップから最終ステップまで……と、できる範囲を逆順に広げていくのである。 
 

 (舞田竜宣 + 杉山尚子著「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」 p.1732008年、日本経済新聞出版社刊)  
 
 【引用おわり】

 バックワード・チェイニングは、一見常識に反している感じがする。最終ステップからスタートするのだから。
 それでは、標的行動を達成しているとは言えないからである。
 しかし、逆順に一つひとつのステップをクリアしていくのはとてもやりがいがある。うまくいっているという感覚を味わうことができる。
 最初のステップから順にやるやり方では、最終ステップが見えず、やりがいを感じられないという問題がある。

2020年2月22日土曜日

バックワード・チェイニングの魔術

 バックワード・チェイニングは、使い方次第では大きな効果を果たす。

 そのことを、舞田氏は、「バックワード・チェイニングの魔術」として、次のように述べる。 
 舞田氏による著書の紹介は第66回目である。

 
【引用はじめ】


 バックワード・チェイニングは、現実にはとても効果的なことが多い。
 なぜならそれは、一般的に、行動連鎖の最初の鎖を達成したときに得られる好子よりも、最後の鎖を達成したときに得られる好子のほうが大きいからだ。
 たとえばマラソンを想像してみてほしい。最初の一歩も最後の一歩も、物理的には同じ一歩である。けれど、スタートから一歩を踏み出したときよりも、ゴールのテープを切る最後の一歩のほうが、得られる喜びは比べものにならないほど大きいはずだ。この、最後の一歩の喜びを先に味あわせることで、その前の長い道のりにも張り合いを持たせる。
 これがバックワード・チェイニングの魔術である。 
 

 (舞田竜宣 + 杉山尚子著「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」 p.1732008年、日本経済新聞出版社刊)  
 
 【引用おわり】

 子どもに靴下をはかせる。最初は一人ではくことができない。
 4分の3ぐらいまではかせて、子どもは靴下上端を引っ張ってはくことができるようにする。
 それができたら、かかと部分まではかせて、それを引き上げることができるようにする。
 今度は、つま先まではかせて、それをうまく引き上げることができるようにする。
 そして、最後のステップは一人で靴下はくことができるようにする。最後のステップから最初のステップに逆順で靴下がはけるようにするのだ。これが、バックワード・チェイニングのやり方である。
 

2020年2月21日金曜日

チェイニングにはフォワードとバックワードがある

 チェイニングには、二つのやり方がある。順に進めるやり方と逆からせめるやり方だ。 
 それについて、舞田氏は、「チェイニングにはフォワードとバックワードがある」と、次のように述べる。 
 舞田氏による著書の紹介は第65回目である。

 
【引用はじめ】


 チェイニングには、フォワード(順行)とバックワード(逆行)の二種類がある。フォワード・チェイニングとは、課題分析された行動を少しずつ前から順につなげて鎖を長くしていくやり方だ。前から順番に、少しずつ鎖を長くしていって、最後にはすべての鎖をつないで、行動全体を完成させる方法がフォワード・チェイニングである。普通、仕事というのは第一ステップから始めて第二ステップ、第三ステップへと進むから、フォワード・チェイニングというのは、ごく常識的なマネジメント手法である。
 一方、バックワード・チェイニングは、行動の連鎖を最後から逆順に完成させていく。だから、最初にすべきことは、最後の鎖となる行動を、教示(言葉で説明して教える)、モデリング(手本を見せる)、シェイピングなどのテクニックを駆使して、確実にできるようにすることである。後ろから逆順に鎖をつないでいき、最終的には、最初のステップまでつないだところで、チェイニングは完成する。 

 
 (舞田竜宣 + 杉山尚子著「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」 p.171p.1732008年、日本経済新聞出版社刊) 
 
 
 【引用おわり】

 チェイニングの手法において、フォワードを使うか、バックワードを使うか。状況を見定めて対応するのがいい。
 バックワードだと最後のステップに近い。そのため、完了の喜びを味わいやすい。そういう意味からバックワードは効果的である。