人が次々辞めたりするのはなぜだろう。どんな行動がそうしたことを触発するのか。単なる辞表を出すことに対する強化では理解できないメカニズムが働いているはずだ。
そのことについて、舞田本では次のよう説明する。その引用は第102回目である。
【引用はじめ】
働き甲斐がない、アイデアが出ない、協力し合わない、ということに並ぶ4つ目の問題は、人が辞めるということです。
それは、辞める(辞意を表明する、辞表を出す)という行動が強化されているからでしょうか。
強化とは、「ある行動をしたら、その直後に心地よさを感じた」という経験を何度も味わうことで、その行動の再現性を高まることを言います。つまり、その行動を何度も繰り返し、心地よさを何度も感じることが必要なのです。しかし、会社を辞めるというのは多くの人にとって何度もすることではありません。
これは、一種のモデリングによるものと考えられます。つまり、同じ会社の他の人が辞めるのを見て、自分も辞めようと思い行動に移すということです。
辞表を出した人を見ていると、それまでは会社に対する不満でいっぱいの顔つきをしていたのが、辞表を出した後は不満など忘れたすっきりした顔つきになっているのかもしれません。また、それまでは仕事のプレッシャーから常に眉間にしわを寄せていたのが、辞表を出した後はプレッシャーから解放された、すがすがしい表情になっているのかもしれません。あるいは、それまでは未来に対して希望が持てず暗い目をしていたのが、辞表を出した後は将来への希望で目が輝いているのかもしれません。
そういう人を見てしまうと、それも次々に見てしまうと、「自分も辞めようかな」と思う、つまり辞めるという行動が引き起こされるのです。離職は連鎖するとよく言われますが、それは、このような心理的メカニズムによるものと思われます。
舞田竜宜著、杉山尚子監修「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社、2012年)、p.149~p.150
【引用終わり】
会社などにとって人が辞めるのは大きな痛手だ。一人が辞めると続いて辞める人が出てくることがある。辞めるという人がとてもすがすがしい顔つきをしているのを見て、自分もと思う人がいることは確かだ。会社内でさまざまな問題から解放されるからでもある。そうしたことが、辞表を出すことにつながる。
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