人は、嫌子を与えられ続けるとそこから逃れようとすることさえしなくなる。
このことについて、舞田本では次のように述べている。
舞田・杉山氏の共著書の紹介は、通算で221回目となる。
【引用はじめ】
動物は、嫌子から逃れられない状況に置かれると、次第に活動性を失うとともに、別の場面においても、新しい課題の課題の学習が困難になる。
セリグマン等は、イヌを使って次のような実験をした。
イヌを二つのグループに分け、第一グループには、拘束した状態で強い電気ショックを与え、自力では電気ショックを止める術がないという経験をさせる。
第二グループは、足でパネルを押すと電気ショックを終了できる状況に置く。
つまり、嫌子消失の強化によって電気ショックから逃れられるという経験をさせる。
このような経験をさせた後、両方のグループのイヌに、予告信号が鳴ったら、壁を飛び越せば電気ショックを回避できるという新しい学習をさせる。
その結果、前段階において電気ショックを回避できなかった第一グループのイヌたちは、電気ショックを逃れる方法を学べなかったのである。
セリグマン等はこの現象を、学習性の無気力と名づけた。
逃れることができない嫌子を与えられ続けると、
(1) 新しい学習をしようという動機づけの低下、
(2) 新しい課題は対処可能であるという理解の阻害、
(3) 慢性的な不安と無気力、という症状が現れる。
はじめはイヌで発見された学習性の無気力は、その後、ラットやネコから人間においても確認されている。
(舞田竜宣 + 杉山尚子著「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」p.98、2008年、日本経済新聞出版社刊)
【引用おわり】
嫌子出現の弱化という随伴性は、良くない影響を与える。
特に、そうしたことが続けば、心理不安が増大する。
多くの行動の停滞につながることもある。
組織も不活発になる。
学習性の無気力というのは、重要な視点である。
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