職場以外の場で行われた特別の内容によって、行動が変わった。それを称して研修効果があったと思い込んでしまう。しかし、実際、職場に戻って仕事を始めると本人の行動が変わったかというと、以前のままである。結局、研修の場と職場は、環境が異なる。本人は環境に適応しているだけなのだ。
そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第14回目である。
【引用はじめ】
内面的なものは、問題行動の原因ではありません。
研修の場では、いろいろな環境要因が実際の職場とは異なるため、望ましい行動が起きるようになってきます(強制的に行動せざるを得ないとも言えそうです)。すると、行動事実の改善が見られるので、内面を表現する言葉も変わってきます。
- 研修では毎日遅刻せず、提出物もすべて期限を守れた ⇒ だらしなくなった
- 研修では名刺を全て配り終わった ⇒ 積極性が出た。羞恥心が消えた
- 研修では黒歴史をみんなに伝えられた ⇒ 折れない心が身についた
これらのことも、やはり行動事実から内面的なものを表しているだけで、実際には体内に何か因子ができたわけではありません。研修の場では、やらなければ終わらない、まわりから注目されている、などのさまざまな環境要因があり、実際の職場の状況と異なるために引き起こされただけなのです。
職場の環境が何も変わってなければ、必ず行動は元に戻ってしまいます。現在の環境に適応していくわけです。
そして、結局は、解決につながっていかないのです。
その結果、「〇〇さんはまだまだ、意識が低いよな」となります。原因は内面にあるとして、さらにそれを変えようとするか、そこであきらめて思考停止になり、いつまでも「意識が低いから」とずっと言い続けることになってしまいます。
榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版刊) p.24~p.25
【引用終わり】
「だらしない性格」という本人の内面を変えようと、研修の場に出す。そこでは、遅刻することなく、提出物もきちんと出すことができた。研修結果は上々。「だらしない性格」が変わったと思う。しかし、職場に戻っていつも通りのやり方が続くと、いつの間にか以前のように遅刻を繰り返すなんてことになる。こうした遅刻するのは、「だらしない性格」のせいなんて考えることそのものが問題なのだ。
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