2021年9月30日木曜日

具体的な行動の、何をどこまでやれば、改善したと言えるのか

  「部下の報連相を徹底する」といっても、具体的な行動のように見えるが、部下の捉え方それぞれ違うことが多い。そこに落とし穴がある。報連相は、誰に、いつ、どのように、その内容はということが大事だ。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第90回目である。

【引用はじめ】

 「部下の報連相を徹底する」という表現は、一見、行動を表しているような感じがしますが、実は行動ではない書き方になっています。

  • 「報連相」とは、具体的には何を誰にどのようにすることなのか
  • 「徹底」とは、具体的に何をどこまでやることなのか

 そんな細かいことを・・・と思われるかもしれませんが、この工程が非常に重要なのです。

 いまの段階では、主観的・抽象的な表現になってしまっているため、人によっては、何日かに1回、重要なことを上司に伝えることが「報告」、と思っている場合もありますし、毎日何をしたか事細かに「連絡」することと思っている可能性もあります。

 「徹底」という表現も、よく使われるものではありますが、何をどこまでやれば徹底なのかの感覚が違うため、人によっては十分やっていると感じても、別の人には物足りない、というズレが生じやすいです。

 具体的な行動の、何をどこまでやれば、改善したと言えるのかを、事前にしっかり設定して臨まないと、何となく変わった気がしたような、しないような、なんだかぼんやりとした取り組みに終わってしまいます。 

榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.99~p.101

【引用終わり】

 具体的というと、その具体の内容やレベルが重要である。「報連相の徹底」というからには、相手に誤解ないよう提示することである。

 上司の思い込みが部下には十分伝わっていない場合もあるからだ。

 「報連相」ってなんだ、「徹底」ってなんだと突っ込んだ中身を相手に分かるようにすることである。 

2021年9月29日水曜日

変容させたい具体的な行動を決める

  行動の改善にあたっては、変容させたい行動とは何か、具体的に決定する必要がある。ここでは、「報連相の徹底」を取り上げている。それをよりわかりやすく明らかにするのだ。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第89回目である。

【引用はじめ】

 目的をしっかり見定めたら、次は可能な限り「具体的」で、変容させたい標的となる行動である「ターゲット行動」を、シートを使って決めていきます。

 たとえば、「報連相の徹底」に関して、「改善すること」とは何かを書き出します。

 「改善すること」➡部下の報連相を徹底する

 次に、これをもっと具体的に、目に見えるレベルの行動に変換していきます。この工程が少し難しいところで、慣れてくればパッとできるようになりますが、考えてしまうこともあると思います。

 「部下の報連相を徹底する」という表現は、一見、行動を表しているような感じがしますが、実は行動ではない書き方になっています。

  • 「報連相」とは、具体的には何を誰にどのようにすることなのか
  • 「徹底」とは、具体的に何をどこまでやることなのか

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.99

【引用終わり】

 「部下の報連相を徹底する」といっても、もっと具体的に表現することが必要だ。誰が読んでもわかるかという視点が大切である。

 「報連相」とは何か。誰に対して行うのか。どのように行うのか。

 さらに、「徹底」とは、何を行うのか。どの程度行うのか。

 そういったことを、より具体的にしないとわからない。

2021年9月28日火曜日

他にもっと改善すべきことはないか

 「報連相の徹底」をするには、どんな改善がいいか。表面的に「徹底しろ!」の指示よりもっといい対策を突き詰めてみる。そうすると、問題がさらに明らかになる。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第88回目である。

【引用はじめ】

  1. 改善したいと思いついたことは何か 「部下が報連相を徹底できないので困っている。徹底させたい」
  2. 何のために上記を改善したいのか、改善したら何につながるか 「クレームなどにすぐ対応できる」
  3. 2の目的のためには、他にもっと改善すべきことはないか

 3つの手順のうちの1番目、2番目まで、「報連相の徹底」について思いついたことを書きました。

 次は、3番目の手順「目的のために他にもっと改善すべきことはないか」を考え、記載します。「報連相の徹底」には、次のようなさらに深い改善も考えられます。

  • クレームやトラブルには、グループウェアの共有で対応できる
  • 間違いの修正も同様だが、個人の部分は見つけづらい、遅い
  • 部下の指導は仕事の成果や人事評価でも見られるが、タイミングが遅いし、その場での指導のほうが上司もやりやすい 

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.97~p.98

【引用終わり】

 職場の仕事そのものを裏の裏まで突き詰めてみる。そのことによって、仕事のやり方の問題点が良く見えてくる。より良い改善策を見いだすことも可能となる。

 そうなれば、「報連相」もごく普段どおりのものになっていく。 

2021年9月27日月曜日

何のために改善し、改善したら何につながるのか

 職場において、「報連相の徹底」がなされればどんなことが可能になるか。どんな改善がなされるか。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第87回目である。

【引用はじめ】

  1. 改善したいと思いついたことは何か 「部下が報連相を徹底できないので困っている。徹底させたい」
  2. 何のために上記を改善したいのか、改善したら何につながるか
  3. 2の目的のためには、他にもっと改善すべきことはないか

 3つの手順のうちの1番目、改善したい内容「報連相の徹底」について思いついたことを書きました。

 次は、2番目の手順「何のために改善し、改善したら何につながるのか」を記載します。「報連相を徹底するとはどういうことにつながるか」についてです。

  • クレームやトラブルがあったときにすぐに対応できる
  • あとから間違いを正すより、修正がすぐにできるようになる
  • 部下の仕事における課題や育成の指導ができるようになる 

 このように、報連相の状況が改善すると何につながるのか、それはやはり重要なものなのかどうか、しっかりと考えましょう。

 書き出したら、「報連相の徹底」が改善されて、その先につながるものが、本当に必要なものなのか、価値のあるものなのかを見極めましょう。

榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.96~p.97

【引用終わり】

 「報連相の徹底」をすればどうなるか。

 クレームへの対応がすぐ可能。間違いへの修正もすばやい。仕事に対する指導もしやすい。

 こういった問題に大いに役立つことが明らかになる。こうしたことまで突き詰めて考えるといい。 

2021年9月26日日曜日

まずは思いついた改善策を書いてみる

  職場内の問題を改善するためには、まず何が問題かを書き出し、その改善策を思いつくまま書き出していみる。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第86回目である。

【引用はじめ】

  1. 改善したいと思いついたことは何か
  2. 何のために上記を改善したいのか、改善したら何につながるか
  3. 2の目的のためには、他にもっと改善すべきことはないか

 3つの手順1番目には、どのような内容について、どんな観点で記述したらいいか。たとえば、「部下が報連相を徹底できないので困っている」の改善策を考えましょう。

 「部下が報連相を徹底できないので困っている。徹底させたい」

 思いついた改善したい内容をそのまま書きましょう。自分の言葉で記入し、主観的でも抽象的でもかまいません。

榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.96

【引用終わり】

 問題についてそんなに明確にとらえられるものでない。それでもいいから、まずは思いつくことを書いてみることが大事だ。ここでは、「報連相を徹底させたい」とだけ書いた。

 そこから、次の段階としてなんのために報連相を徹底させるのか、それが改善したらどうなふうになるかを考えればいい。今一番気になること、問題だと思っていることを書いてみるのだ。 

2021年9月25日土曜日

もっと本質的に変えたほうがよいことがあるはず

  問題の改善といっても、意外と単純ではないケースも多い。目的が明確になったと思っても、見当はずれなことをやっていることもある。枝葉末節にこだわっている場合もあるからだ。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第85回目である。

【引用はじめ】

  1. 改善したいと思いついたことは何か
  2. 何のために上記を改善したいのか、改善したら何につながるか
  3. 2の目的のためには、他にもっと改善すべきことはないか

 以上、3つの手順によって、「何のために」という目的を明確化できたら、いま何とかしようとしている改善策よりも、「もっと本質的に変えたほうがよいことがあるのでは?」と考えてみましょう。

 目の前にある「望ましくないこと」についつい目が向きがちですが、マネジメントする立場の上司であれば、それが本質的な目的につながるのかどうか、もしかしたら、もっと別のことのほうが大事ではないか、という目線をもてるようにしなければなりません。

 せっかく、問題行動を改善したのに、職場に必要なこととは何も関係がなかった、ということのないようにしましょう。 

榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.96

【引用終わり】

 職場において問題が生じている場合、改善を急ぐあまり目先の対策に陥る場合がある。改善しているつもりで空回りといったことがある。「改善の罠」でかえって問題を悪化しかねないことに留意する必要がある。

 問題の本質をつきつめることが大事だ。そのためにも、問題は何かとことん明らかにするのだ。

2021年9月24日金曜日

まずは目的を明確にする

 職場おいては、問題だなあと思いがあっても、意外とその問題の内容があいまいだったする。そのため、いつになってもその問題が放置されたままであることが多い。そして、なんだかうまくいかないなあなんて、ぐちったりしている。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第84回目である。

【引用はじめ】

 本来、いちばん大事なことに、なぜか抜け落ちやすいもの、それは「目的」です。

 職場では、いろいろと自分が望ましくないと感じるものを「問題」ととらえがちですが、実は、それはたいした問題ではない場合もたくさんあります。

 逆に、「問題」とは見えていなくても、実は、大きな悪影響を及ぼしていることもたくさんあるのです。

 ABAマネジメントを行なうにあたって、職場における問題点を、何のために改善するのか、その目的を明確化する必要があります。

 次のような手順で目的を明らかにすることです。

  1. 改善したいと思いついたことは何か
  2. 何のために上記を改善したいのか、改善したら何につながるか
  3. 2の目的のためには、他にもっと改善すべきことはないか

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.94~p.95

【引用終わり】

 職場内の問題は何か、それを明らかにして職場内において周知徹底することが大事だ。問題に関する改善内容をしっかり把握する。そして、改善するのは何のためか。改善をすべきことはそれだけでいいか。

 こうしたことを、文章表現でリストアップするのである。 

2021年9月23日木曜日

報連相が徹底できてない

 「部下が報連相を徹底できないので困っている」という上司も多い。こうした場合の改善をどうすれば良いか。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第83回目である。

【引用はじめ】

 改善したいことは「部下の報連相を徹底させたい」ということです。多くの職場で聞かれる課題です。

 企業規模の大小にかかわらず、報連相(ホウレンソウ=報告・連絡・相談)を徹底させたいという上司はとても多くいます。

 上司が期待している望ましい部下のあり方ですが、なかなか部下が徹底できていないものの一つではないでしょうか。

 これをABAマネジメントの手順にしたがって、改善策を実践していきましょう。 

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.94

【引用終わり】

 職場では、報連相の徹底ということがよく叫ばれる。ということは、十分報連相がなされていないという現状があるからだ。職場において、報連相しなくてもなんとかやることができているから大丈夫といった風土ができ上がっているとも言える。しかし、現状が問題なくても、リスクを伴う問題がいずれ生じかねない。

 こうしたリスクを避けるためにも日常的に報連相が徹底されるべきである。そうした徹底がなされる状況をつくりだすための方策こそ必要である。 

2021年9月22日水曜日

やってみないとわからない

  ABAマネジメントを手順にしたがって進めたにしても、うまくいくとは限らない。そうだからといって、こんなのやっても無駄と思って、やめないでほしい。うまくいかなかったら、次の試みをする。一回でうまくいくとは限らない。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第82回目である。

【引用はじめ】

 ABA(応用行動分析学)マネジメントで進める手順における改善策は、あくまでも仮説です。

 ですから、その策が正解で、これをやれば大丈夫! とは決めつけないようにしましょう。「やってみないとわからない」のです。

 この、「やってみないとわからない」という前提を忘れてしまうと、「改善策を実施したのにうまくいかない。やっぱり、うちの部下はもともと向いていなかったんだ」などと、うまくいかない原因を個人の内面にもっていってしまうことになりがちです。人の見えない内面を原因にすると、その場はとても楽ですからね。

 しかし、これでは再び思考停止に陥り、現実的な改善にはつながりません。前提として、「可能性が高い改善策」から試している、という感覚をもって、本当にうまくいくのかどうかを、見極めながら進めていきましょう。

 うまくいかなかったら、この改善策ではなかったのだ、ということで、次に進めばよいのです。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.93

【引用終わり】

 ABAマネジメントだって、魔法の杖ではない。簡単に改善策が見出せるという幻想は持たないことである。職場内で問題となるからには、それなりに複雑なはず。まずはABAマネジメントの手順どおりやってみることだ。これはあくまでも思考実験なのだから、仮説にすぎない。

 そして、実際やってみて、うまくいくかどうかやってみなければわからない。こうすることで、問題が鮮明になり、改善策に近づくはず。

2021年9月21日火曜日

改善策に飛びつかない

 職場内での問題に対して、やみくもに改善策に飛びつく結果、問題をさらに悪化させることもある。できるだけABAマネジメントを省略せず手順通りに進めるのがいい。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第81回目である。

【引用はじめ】

 慣れてくると、ついつい途中の過程を飛ばして、「改善策に飛びつく」ということをしてしまいます。実は、これでうまくいかないケースがとても多いのです。

 たとえば、次のような職場での問題があったとします。「A上司は、いつも大きな声で部下のBさんを叱責している。職場の雰囲気を悪くするので何とかしたい」

 ここで、「上司は高圧的なタイプだ」として、その高圧的な性格を何とかしよう、というのは、循環論における個人攻撃となるのです。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.92

【引用終わり】

 ABAマネジメントの手順は、「目的の明確化➡変容行動の決定➡ABC分析➡改善案の決定➡優先順の策定」となる。この手順にしたがってまず試してみる。うまくいけば、それを繰り返す。うまくいかなければ、どこの手順に問題があるか検討し、再度試すことになる。

 思い付きの改善策には飛びつかないことが大事である。 

2021年9月20日月曜日

ABAマネジメントを進める手順

 ABA(応用行動分析学)マネジメントでは、引用のような手順を追って進めるのがいい。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第80回目である。

【引用はじめ】

 ABAマネジメントの実践においては、以下のような手順で進めます。

  1. 改善したいことと、その目的を明確化する
  2. 変容させたい具体的な行動を決める
  3. ターゲットとした行動をABC(先行条件➡行動➡結果)分析する
  4. 分析した結果から改善案を考える
  5. 出てきた改善案の優先順位をつくる

 上記のような各工程を飛ばさずに、着実に進めていくことが望ましい。そして、次の二つのことに留意して実施することにも気をつけましょう。

  • 改善策に飛びつかない
  • やってみないとわからない

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.91~p.92

【引用終わり】

 上記の引用のような手順どおり実施してみると、効果的なことがわかるはずだ。ただ、やってみてうまくいかないこともある。そうなったらあきらめず、最初からやり直す必要がある。改善案などに問題がある場合が多い。 

2021年9月19日日曜日

上司自身が好子になる

 上司が部下に対して、褒めたりすることが続けば上司自身が好子になる。「好子」とは、「何か行動をした直後に出現すると、その行動の自発頻度を高める出来事や条件」である。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第79回目である。

【引用はじめ】

 上司が部下に対して、次のような好子を対提示する人だったらどうでしょう。

 部下が「褒められる」「良さを指摘される」「笑顔」「認めてくれる」ことなどが「対提示」されると、上司自身が「好子」になります。

 上司自身が好子になっていくと、部下もできるだけ一緒にいるようになります。指導も受けやすくなり、報連相をする機会も増え、コミュニケーションもよくとるようになります。

 したがって、人材育成も仕事の成果も実現できるようになってきます。

 上司自身が好子になるか、嫌子になるかで、組織のパフォーマンスは大きく違ってきます。できるかぎり、他の好子と対提示できるようにしていきましょう。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.88

【引用終わり】

 上司自身が部下に対して、好子になるような行動を繰り返すと、部下も上司との関係は良好なものとなる。お互いの関係はより良いものとなって、組織にもいい影響を与えることになる。

 上司と部下とのより良い関係づくりが、成果を上げていくことにつながる。 

2021年9月18日土曜日

上司が嫌子になるとどうなるか?

 「嫌子」とは、「何か行動した直後に出現すると、その行動の自発頻度を低める出来事や条件」である。上司が部下に対して、怒るなどが続けば上司が嫌子になってしまう。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第78回目である。

【引用はじめ】

 上司と一緒にいると、いつも怒られる。ダメ出しされる、嫌な顔をされる、バカにされる。

 このように上司と上記のようなことが繰り返されると、上司自身が「嫌子」になってしまう。

 すると、どのようなことが起こるでしょうか。嫌子である上司を避けるようになり、できるだけその上司がいないところで仕事をするようになり、コミュニケーションも取らなくなっていく、ということが起きてきます。上司を避ける行動の「嫌子消失による強化」です。

 こうなってしまうと、仕事は進まないし、経験も積めず、技術も教えてもらう機会がなくなるので、スキルも身につきません。人は育たず、成果も出ない組織ができあがります。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.87~p.88

【引用終わり】

 上司が部下に対して嫌子を対提示続ければ、上司そのものが嫌子になってしまう。上司を避けようとして、上司を頼ったり、仕事を教わろうともしなくなる。報告も上げないなんてことも起こってしまう。関係が遠ざかってしまうのだ。明らかに効率が下がるのは確実である。 

2021年9月17日金曜日

好子な上司と嫌子な上司

 上司の好き嫌いってどんな風に決まるか。初任者にとってはじめは好きでも嫌いでもないはずだ。それがだんだんと接するうちに好き嫌いが鮮明になってくる。上司から褒められる、あるいは怒られるなどの経験の積み重ねによるものだ。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第77回目である。

【引用はじめ】

 好子となる上司(好かれる上司)と、嫌子となる上司(嫌がられる上司)とでは、いったいどこで差ができるのでしょうか?キーワードは、「対提示」です。

 もともと、初めて接する段階では、上司はその部下にとって、好ましいものでも、嫌なものでもありません。中性刺激なのです。

 しかし、その上司と長く一緒にいると、その他のいろいろな刺激が出現します。「対提示」されるわけです。

 そして、その上司と一緒にいると、いつも怒られる。ダメ出しされる、嫌な顔をされる、バカにされる・・・、というように、嫌子と一緒に「対提示」されることにより、はじめは中性刺激だった上司そのものが、「嫌子」になってしまうのです。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.87

【引用終わり】

 上司からいつも怒られるなどによって、上司と顔を合わせることを避けようとする。上司に対する苦手意識が高ずるようになる。上司と「怒られる」ことが対提示するからだ。上司が嫌子になってしまう。 

2021年9月16日木曜日

対提示とCМの例

   テレビのCМに起用される有名人は、好感度の高い人である。車に乗っているタレントを見ることで、その車もとてもよく見える。対提示が成功した例である。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第75回目である。

【引用はじめ】

 対提示の具体的な内容として、次のようなCМが好例です。

 テレビや雑誌などで、好感度の高い有名なタレントや俳優、スポーツ選手などが商品を宣伝しています。好感度の高い有名人は、好子としての要素が多くあるので、それと一緒に「対提示」される商品の好感度も上がるわけです。

 ただし、逆のケースもあり得ます。スキャンダルなどで印象が悪くなった有名人は、やはりCМには使われなくなってしまいますね。対提示される商品も悪い印象になってしまうからです。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.86

【引用終わり】

 対提示の良しあしで、物事の見え方はすごく違ってくる。大好きなタレントが着ている洋服を着てみたくなったりする。対提示によって、行動に大きく影響するのだ。私たちの行動は、対提示されたものに左右されている部分が大きい。 

2021年9月15日水曜日

対提示の概念

   生得性の好子が中性の刺激と対提示されると、中性の刺激が習得性の好子になるということをパブロフが発見した。それがパブロフの条件反射の原理である。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第75回目である。

【引用はじめ】

 「対提示」は「ツイテイジ」と読みます。パブロフの犬の例があげられます。

 もともと、「ベルの音」というのは、犬にとって好ましいものでも、嫌なものでもない中性の刺激です。しかし、毎回エサという生得性の好子と一緒にベルの音が鳴ることで、ベルの音自体が好子としての機能をもつようになるのです。

 「ある刺激が、別の刺激と一緒に提示されること」 これが対提示の概念です。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.85

【引用終わり】

 パブロフの実験において、犬はエサが提示されるとヨダレを出す。エサと同時にベルの音が提示されることを繰り返されると、エサが対提示されなくてもヨダレを出すようになる。それが有名な条件反射である。

 ベルの音という中性だった刺激がヨダレを促す好子の働きとなるということである。 

2021年9月14日火曜日

習得性の好子・嫌子は人によって異なる

   生まれもって行動を促す刺激は、「生得性」のものであり、さまざま経験によって生み出される刺激が、「習得性」とよばれるものである。「習得性」の刺激は人によって異なるのである。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第74回目である。

【引用はじめ】

 習得性の場合、人によっては好子として働いても、別の人には好子にならないケースもあり得ます。嫌子も同様です。

 みんなの前で褒められることが好子だと思って褒めてあげても、その人が以前、みんなの前で恥をかかされた経験などがあり、それと似たような状況になることで、褒められることが嫌子として働くこともあったりするのです。

 食べ物の好き嫌い、嗜好品の好き嫌い、注目されること・目立つことの好き嫌い、趣味の好き嫌いなどについても同様です。

 これらは、育ってきた過程のなかで、たまたま他の好子と一緒に出てきたために好子になったり、逆に他の嫌子が出てきたときに同時に出たりして嫌子としての機能をもったりするなどして形成されているのです。

 本当に好子なのか、それとも嫌子なのか、あるいはどちらでもないのか、実際に行動が強化されるか、弱化されるかで初めて明らかになるものでもあるのです

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.83~p.84

【引用終わり】

 人は多くの経験を積み重ねて学んでくる。その経験が好子になるものもあるし、嫌子になるものもある。

 その人にとって好子となる刺激であれば、行動が強化され、その行動は繰り返されるようになる。たとえば、とても甘い口当たり良い果物だったら、大好きになる。

 それが逆に苦くて口当たりがよくない野菜だったら、嫌いな食べ物となり二度と口にしなくなる。こうしたことにより、「習得性」の刺激が決まってくる。

2021年9月13日月曜日

「生得性」と「習得性」の刺激

  行動を促す刺激として「生得性」と「習得性」のものがある。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第73回目である。

【引用はじめ】

 好子や嫌子には、次のように「生得性」のものと「習得性」のものがある。

 「生得性」 「生まれたときから好子(嫌子)になるような刺激」

 「習得性」 「最初は好子でも嫌子でもないが、あとからその性質になるような刺激」

 「生得性」の好子には、たとえば、食べ物や水、適切な温度や湿度、人とのふれあい、性的刺激などがあります。生きるために必要なものが多いでしょうか。

 「生得性」の嫌子のほうには、大きな音や、痛い刺激、過度な温度など、生きるために避けるべきものが当てはまります。

 一方、「習得性」の好子、嫌子は、育ってきた環境などにより、個人ごとに違うものが該当します。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.83~p.84

【引用終わり】

 「生得性」のものには、生きるためになくてはならない刺激である。食べ物などがその典型である。食べ物には好子としての働きがある。

 逆に痛みなどは生得性の嫌子である。痛みをもたらすものに対しては、避けようとするのである。

 「習得性」の刺激は、それぞれの経験によって大きく違ってくる。好みがそれぞれに違ってくるというのは、こうしたことからである。

2021年9月12日日曜日

お金は最初からもともと好子?

 行動を強化したり、弱化するものとして好子や嫌子がある。それも、もともと好子や嫌子の働きがあるもの、あとからそうした働きになるものとがある。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第72回目である。

【引用はじめ】

 ほとんどの人に、「お金」は好子として強力に働きます。お金という好子が提示されるために、働くことが強化されるというのも、当たり前のことです。

 でも、生まれたばかりの赤ちゃんにとっては、「お金」は好子にはなりません。赤ちゃんには、母乳だとか、スキンシップみたいなものが、強力な好子として働きます。

 実は、このように好子には、生まれもって好子となるもの、あとから好子に変わるもの、というような区分があるのです。嫌子も同様です。

 「生得性」 「生まれたときから好子(嫌子)になるような刺激」

 「習得性」 「最初は好子でも嫌子でもないが、あとからその性質になるような刺激」

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.83

【引用終わり】

 生まれたときから好子や嫌子だったという刺激には、食べ物がある。食べ物は強力な好子の一つである。生得性の好子として働きがある。

 但し、食べるとお腹をこわしたりするものは生特性の嫌子と言える。 

2021年9月11日土曜日

「連続強化」より「部分強化」のほうが、行動は消去されにくい

 「強化スケジュール」ば、「連続強化」と「部分強化」がある。この二つには、どのような違いがあるか。行動に対する影響力の違いである。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第71回目である。

【引用はじめ】

 面白いのは、「連続強化」よりも「部分強化」のほうが、行動は継続して、消去されにくいという点です。

 毎回、当たりが出るよりも、出たり出なかったりするほうが、今は出なくても次は出るかも、と学習するからか、行動はなかなか消去されずに継続する傾向があるのです。

 よく、部分強化はギャンブルにたとえられます。ゲームなどに、はまる場合もそうでしょう。

 毎回当たったり、ご褒美が出ると飽きてしまいます。

 一方、いつまでやっても当たりが出ないと、行動は消去されてしまいます。消去になるギリギリぐらいのところで、大当たりになると、おそらく一番「ハマる」のでしょう。どんどん継続して行動してしまうことになります。

 部下が進んでどんどん行動するようにさせるのが得意な上司は、きっと部下を褒める「強化スケジュール」を絶妙なタイミングで活かしているのではないでしょうか。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.82

【引用終わり】

 「部分強化」は「連続強化」に比べて、行動が消去しにくい。時たましか強化されないので、また強化されるかもしれないので、行動してみることになる。

 「連続強化」だと、今までずっと強化されていたのに、それが突然強化されなくなれば、もう強化されないのだとあきらめが早い。それで、行動しなくなる。そうしたことで、「部分強化」のほうが消去されにくいということになる。

 

2021年9月10日金曜日

「部分強化」とは

 行動した直後に、好子などが毎回提示されるか、時々しか提示されないかなどで、行動に対する影響も大きく違ってくる。この「強化スケジュール」という概念は、「連続強化」と「部分強化」と呼ばれるものだ。「部分強化」にはどんな例があるか。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第70回目である。

【引用はじめ】

 「強化スケジュール」とは、「どのような間隔とタイミングで、好子が提示されるかをスケジュールで表したもの」です。強化スケジュールには、「連続強化」と「部分強化」があります。

 その中でも「部分強化」とは、行動したあとに、好子が出現することもあれば、出現しないこともある場合です。

 たとえば、次のようなことです。

  • くじを引いたら、当たりになることもあれば、当たらないこともある。
  • ほしいものをねだったら、買ってくれるときもあれば、買ってくれないときもある
  • 仕事で成果を出したら、上司が褒めてくれるときもあれば、褒めてくれないときもある

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.81~p.82

【引用終わり】

 競馬などで馬券を買っても、当たったりはずれたりする。それでも、当たり券はこれだと思って買うのだが、残念ながらはずれる。それでも当たるはずと思って買うと、うまく当たることがある。俺の考えが的中したと喜ぶ。これは「強化スケジュール」で言えば、「部分強化」の典型である。それだから、競馬で馬券買うのがやめられないというわけだ。 

2021年9月9日木曜日

「連続強化」とは

 行動した直後に、好子などがどのようなタイミングに提示されるかによって、行動にも大きく影響する。それが、「強化スケジュール」という概念である。1回ごとに必ず好子が出現することを「連続強化」という。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第69回目である。

【引用はじめ】

 「強化スケジュール」とは、「どのような間隔とタイミングで、好子が提示されるかをスケジュールで表したもの」です。強化スケジュールには、「連続強化」と「部分強化」があります。

 「連続強化」とは、行動したあとに、必ず好子が出現することです。

 たとえば、次のようなことです。

  • 自動販売機でボタンを押したら、毎回ジュースが出る
  • リモコンのスイッチを押したら、TVがつく
  • 家族に「おはよう」というと、必ず「おはよう」と返事がくる

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.81

【引用終わり】

 私たちは青信号になったら、横断歩道を渡る。車も横断歩道の前で止まってくれるし、歩行者も安心して渡れると思っている。

 青信号になれば、安全に横断歩道を渡ることができるのだ。それはいつもどこでも行われている。これが、「連続強化」の一つである。 

2021年9月8日水曜日

「連続強化」と「部分強化」スケジュール

 行動の直後に好子が出現することで、その行動は繰り返すようになる。強化される行動は、好子の出現間隔などがどのぐらいの程度によるかで、行動の様子も変わってくる。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第68回目である。

【引用はじめ】

 行動したあとに、好子が出現することで、行動を繰り返すようになることを「強化」といいます。

 この「好子」が、行動するたびに毎回出現するのか、それとも2回に1回なのか、それとも完全に不定期なのか―どのような「スケジュール」で出現し、どのように強化しているのかをあらわすのが「強化スケジュール」です。その概念は次のとおりです。

 「どのような間隔とタイミングで、好子が提示されるかをスケジュールで表したもの」

 強化スケジュールには、「連続強化」と「部分強化」があります。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.81

【引用終わり】

 「強化スケジュール」はその状況によって様々である。連続的に強化される場合、部分的に強化される場合では、行動の様相も違ってくる。

 毎回強化されるのと、たまにしか強化されないとなると、行動の出現頻度に影響してくる。 

2021年9月7日火曜日

コストが大きいとやらずに、小さいとやる

 手間がかかり、面倒くさいなどがあると、積極的な行動はしないのが普通である。つまり、行動コストがかかるということだ。簡単な行動だったらやってしまう。逆に難しかったらやらないということである。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第67回目である。

【引用はじめ】

 お菓子が袋から開かれた状態で、お皿の上に置いてあり、お菓子を食べるためには、「ワンアクション」でたどり着けます。非常に行動のコストが少なくて済んでしまいます。ちょっとつまみ食いし放置状態なわけです。

 逆に、お菓子は事務所の奥のほうにある食器棚の一番上の扉付きの棚に、蓋のついた缶の中に入れてしまっています。このときは、私のつまみ食いという不適切な行動は引き起こされにくい。

 お菓子を食べるまでに、たくさんの行動をしないとたどり着けない、つまり行動コストが大きいからです。一般的な言い方をすれば、「面倒くさいから」です。

 なかなかやろうと思ってもできていない、望ましい行動があれば、そこに至るまでに、どれだけの行動コストがかかっているのか。逆に、不適切なのに、ついついやってしまう行動があるのであれば、おなじくどれくらいの行動コストでたどり着いてしまっているのか。望ましい行動には、できるだけ行動コストを減らし、不適切な行動には、できるだけ増やすような環境の設定していきましょう。

 意思の力よりも、はるかに現実的な改善につながります。

 「行動コストとは、行動にたくさんのコストがかかると行動せず、少ないコストだと行動する」ことです。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.79~p.80

【引用終わり】

 お菓子が目の前にあればついつい手を出して食べてしまう。しかし、それが遠くにあるようだったら直ぐ手を出すようなことはないだろう。

 行動するのに手間がかかることはあまりしたがらないのは当然である。行動もコストしだいということだ。 

2021年9月6日月曜日

研修の場と職場では環境の違いが大きい

 研修の場では、「あいさつする」ことがうまくいくようになった。しかし、職場においては、「あいさつする」ことがうまくいかない。研修の場と職場においては、対応に違いがあるため、うまく「般化」しなかったためといえる。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第66回目である。

【引用はじめ】

 同じ人間であっても、あの人の前だとうまくできるのに、この人の前だとうまくできない、というように般化ならずに区別されてしまうことも起きます。研修ではうまくできるのに、職場ではダメ、というのも同じです。

 ABC分析で、研修の場について分析してみましょう。

 A=先行条件「研修講師・研修仲間」➡B=行動「あいさつする」➡C=結果「講師が褒める・なかまが褒める」 (好子出現による強化

 職場でのABC分析では次のようになります。

 A=先行条件「職場の上司・職場の同僚」➡B=行動「あいさつする」➡C結果「反応なし・嫌な顔をされる」 (好子消失による弱化・嫌子出現による弱化

 研修ではうまくいくのに、職場ではパフォーマンスを発揮できないパターンでは、このように行動の前後のAもBもCも大きく異なるケースが見受けられます。研修の場と、本来の職場では、その環境の違いが与える影響が大きいわけです。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.78

【引用終わり】

 「あいさつする」ことが、研修の場ではできるようになっても、職場などではできなくなってしまう。

 ABC分析すると、Cの「結果」が違うからである。研修の場では、講師や研修仲間があいさつしたら褒めてくれる。しかし、職場に戻ると、上司や同僚はあいさつするなんて当たり前といった態度で、反応してくれなかったりする。また、面倒くさがる態度を示したりする。これでは、「あいさつする」ことが強化されない。

2021年9月5日日曜日

般化とは応用力

 適切な行動が異なった場面や場合でもできるということは大事である。似たような状況に対しては、うまく行動ができるというのが、般化力があるということになる。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第65回目である。

【引用はじめ】

 般化とは、「ある特定の刺激により起きる行動が、似たような別の刺激でも同様に起きるようになること」という概念です。

始めて見た形の信号機でも、おそらく進んでいいか、止まれなのかの区別がついて、進むことができます。初めて手にした水筒であっても、おそらくフタを開けることができます。

本来は、異なる先行条件であっても、近いもの、似ているものであれば、対応できるのです。「応用できる」という素晴らしい能力です。

般化は、区別との絶妙のバランスで機能しているのです。子どものころ、お医者さんに注射打たれ、痛い思いをしために、白衣を着た人を前にすると、逃げたくなるのも般化といえます。

初めて来た場所でも、ここはフォーマルに振る舞う場所だ、あるいはここはリラックスして休める場所だ、と判断して行動できるのも、般化という力があるからです。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.77~p.78

【引用終わり】

 般化というのは、適切な行動だけでなく、不適切な行動となっても起こるということは留意する必要がある。先行刺激として似たような状況であれば、行動は発現するのだ。これが「般化」である。

 「般化」は発現してほしいときには発現することはもちろん望ましい。しかし、発現してほしくない場合でも「般化」によって行動は発現するのである。こうなって欲しくないならば、それなりに「般化」を制御しなければならない。 

2021年9月4日土曜日

研修の場ではできたのに、職場ではできない

  ある場面では、適切な行動ができていたのに、他の場面では同じような行動ができなくなってしまう。

 そのことについて、榎本氏は次のように述べる。榎本氏の著書からの引用は第64回目である。

【引用はじめ】

 「Aさんは、研修の場では誰よりも大きな声であいさつしていたのに、職場ではからっきしだね。本番に弱いタイプなのかな」

 このような声を聞くことが多いです。しかし、「本番に弱いタイプ」という表現は、レッテルを貼り、循環理論に陥っているので適切ではありません。ABC分析をすれば、必ず原因が別に見つけられます。

 この場合は、研修の場では強化されていたものが、別の環境に変わった際に「般化」が不十分だった、ということが考えられます。

 般化とは、「ある特定の刺激により起きる行動が、似たような別の刺激でも同様に起きるようになること」という概念です。

 榎本あつし著「自律型社員を育てる〖ABAマネジメント〗」2017年(アニモ出版) p.77

【引用終わり】

 いつでもどこでも適切な行動ができるといいのだが、特定の場面でしかうまくいかないといったケースがある。結局は異なる場面では、以前の条件とは違っていることもあってそれにうまく合わせられない。そうしたことのため、以前のような行動ができなくなってしまう。

 「般化」がうまくいかなかったということになる。条件が異なったとしても、適切に行動ができるように「般化」させることが必要なのだ。